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Channel: CULTURE FEATURE(カルチャー特集) | HOUYHNHNM(フイナム)
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映画『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』公開記念インタビュー 夏帆 時代を超えた現場で。

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とにかく夏帆が可愛くて仕方がない。ドラマ「みんな!エスパーだよ!」で演じたエロティックだけど純真な女子高生・平野美由紀の姿にノックアウトされたクチであることは言うまでもない。そんな彼女が、映画『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』の宣伝のためにインタビューを受けるという。下心まるだしで現場に赴いた僕らの前に現れた彼女は、女子高生の平野美由紀でもなく、時空ジャーナリスト・細野ヒカリでもない。知的で誠実で冷静な立ち振る舞いからは、可愛さよりも強さを感じさせる。あくまでも可憐な容姿はそのまま。1人の強い女性。女優・夏帆が語る『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』について。

Photo_Motoyuki Daifu
Edit_Hiroshi Yamamoto,Yuji Nakata

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cf_timescoop_movie.jpg 『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』
出演: 要潤、夏帆、杏、時任三郎、上島竜兵、小島聖、カンニング竹山、嶋田久作、宇津井健(特別出演)
監督・脚本:中尾浩之 NHK「タイムスクープハンター」シリーズ
製作:TSH Film Partners
制作プロダクション:P.I.C.S.
配給 :ギャガ
2013年8月31日(土)新宿ピカデリー他全国ロードショー
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NYの名門レーベルの「サルソウル」音源をDJ NORIがノンストップMIX。

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世界中のダンスミュージックファンに愛され続けるNYの名門中の名門レーベル「サルソウル」。その音源を使って、キャリア30年を超える日本の至宝、DJ NORIがノンストップMIX。80年代のNYで現地のクラブシーンを体験し、伝説のDJラリー・レヴァンとも共演したNORIが、自らのアナログレコードでプレイした渾身のライブMIXだ。

Photos_Munehiro Saito[S-14] Edit_Masaki Hirano

DJ NORI
79年にDJスタート。86年に渡米。「パラダイスガレージ」でDJラリー・レヴァンと出会い、NYの人気クラブで共にプレイする。90年伝説のクラブ、「ゴールド」オープニングのため帰国。レジデントDJとして活躍しつつ、海外での活動も平行して続ける。06年12月、初のミックス・アルバム『LOFT MIX』をリリース。音楽のかけ方、音楽そのものの表現方法を知っている世界の至宝。

いろんな要素がミックスされたメッセージ性の高い楽曲が魅力。

-今回のMIX『BACK TO MY ROOTS』を聴かせていただきました。思わずリズムをとってしまうというか、身体が自然と動いちゃうような印象ですね。

NORI: ありがとうございます。

-録音はすべてNORIさんがお持ちのアナログレコードを使って録られたと伺ったんですが。

NORI: そうですね。すべて12インチのレコードを使って録りました。

-個人的に伺いたいんですが、あまりMIXを出さないNORIさんの新作MIXが出ると知って「おー!」と思ったんですが、さらにそれがサルソウル音源だけと聞いて「おおーっ!!」と、2回驚いたんですが。何か深い理由があってのサルソウルだけの新作MIXなんでしょうか?

NORI: 正直に言うと特に何か理由があったわけではなく、オファーをいただいたからなんです(笑)。ただそれが、僕的も思い入れのあるサルソウルで、ぜひやってみたいと思ったからですね。

-NORIさんとサルソウルの出会いはいつ頃だったんですか?

NORI: 僕がDJを始めたころにはすでに存在していたレーベルだったんで、自然と知るようになった感じです。ただ意識し始めたのはNYに行ってからだったように思います。

-今回は『BACK TO MY ROOTS』というタイトルが付いていますが、なにか特別な感情がありそうだなと思ったんですが。

NORI: 収録されているすべての曲が、自分が20代のころによく聴いてた曲ばかりなんです。そういう意味ではサルソウルは自分のルーツでもあるので、このタイトルを付けました。

-特に思い入れのある曲はありますか?

NORI: どの曲も好きでたくさん聴いてました。だから全部に思い入れがあるんですが、特にひとつを挙げるなら、「BY THE WAY YOU DANCE」のラリー・レヴァンのリミックスバージョンですね。ラリーとツアーをしていたときに本人から教えてもらいました。

※ラリー・レヴァン=NY生まれの伝説的DJ、音楽プロデューサー。1980年代、NYキングストリートにあったディスコ「パラダイス・ガレージ」での活躍が有名。ガラージュ・ミュージックの始祖。
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-サルソウルそのもの魅力ってどんな部分だと思いますか?

NORI: 音楽性という意味ではディスコミュージックの最高峰だと思いますね。名前のとおりサルサとかソウルとか、いろいろな要素もミックスされているし、メッセージ性もある。なにより楽曲が素晴らしいんです。

-なるほど。

NORI: しかも今でも昔の曲をリメイクした新しいバージョンがリリースされたりするんです。そういう意味では、クラブシーンやダンスシーンでは、みんなからリスペクトされているレーベルだと思います。

-サルソウルがいちばん盛り上がっていたころは、音楽好きの人たちからどんな風に受け入れられていたんですか?

NORI: 例えばクラブのピークタイムにかかる曲もあれば、ラウンジでゆったりしているときに聴きたい曲もあったし、80年代の前期にはブレイクダンサーたちが好んで使った曲もありました。とにかく幅広くいろんな場面でサルソウルの曲を聞いたように思いますね。

-今回のMIXの聴きどころみたいなものがあれば教えてください。

NORI: 割と頭から最後までメッセージ性のある曲を入れていて、どの部分が盛り上がるというよりも、全体の流れを楽しんでもらえたらいいなと思いますね。

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家の前をラリー・レヴァンが歩いていてばったり会った。

-では少し話しの方向性を変えさせてください。そもそもNORIさんがDJを始めたきっかけは?

NORI: 若いころにちょうどディスコやソウルが盛り上がっていて、僕の地元の札幌でもすごく流行ってたんです。当時、いろんな友達がたくさんいたんですけど、DJをやっている仲間もいたりして、そんな影響もあって僕もDJを始めました。

-ということは札幌のあとに東京へ出てきたと。

NORI: そうですね。何年か札幌でやって、そのあと上京して六本木でやってました。

-NORIさんと言えば「NYの人気クラブでプレイし~」というプロフィールをよく目にしますがいつごろから行かれてたんですか?

NORI: 初めて行ったのは83年です。2回遊びに行って、この街は住んでみないとわかんないなと思って86年から住み始めました。まあ海外で生活したいなと思っていて、別にNYでDJをやるぞ! とかそんな気持ちではなかったですね。

-いくつのときの話しですか?

NORI: 23歳で初めて行って、26歳で住み始めました。最初はウエイターをやっていたんですが、そのうちレストランでDJをやるオーディションがあったんです。そのオーディションに受かってプレイするようになって、そこから知人のホームパーティなんかに呼ばれてDJをしたりしているうちに、ラリー・レヴァンと知り合って彼と一緒にプレイするようになりました。

-今、さらっとラリー・レヴァンの名前が出ましたが(笑)。ラリーとはどういう風に出会ったんですか?

NORI: まず彼の音楽との出会いは、彼がMIXしたレコードですね。そのあと「パラダイス・ガレージ」というディスコでプレイを聴いて衝撃を受けました。本人との出会いは、僕の家の前をラリーが歩いていてばったり会ったのが最初です。

-ええ!? そんなことってあるんですか?

NORI: あったんですよね(笑)。「あ! ラリーだ!」と思って声をかけて、少し話しをしました。それでそのちょっとあとに、彼がプレイしているクラブに遊びに行ったときにまたあいさつをしたら彼も憶えててくれて、それから交流が始まりました。ちなみに、彼に会ったときはパラダイス・ガレージはもうクローズしていましたね。

-ということはNORIさんはパラダイス・ガレージではプレイしていなんですね?

NORI: そうですね。僕は普通にお客として遊びに行ってました。まあ当時は日本人がNYの人気クラブでDJができる感じではなかったですね。今みたいにコミュニケーションが取れてる時代じゃなかったですし。

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-パラダイス・ガレージは、実際どんなディスコだったんですか?

NORI: もともと駐車場だった建物をディスコにしたから「ガレージ」という名前が付いてたんですが、とにかく大きな箱で、僕たちのような一般客が入れないようなスペースやシアターなんかもありました。言葉ではうまく言えないんですけど、外界から守られてるというか、キッチリしているというか。とにかくいろんなものを感じられた素晴らしい場所でした。

-NORIさん以外の日本人もたくさん遊びに来ていたんですか?

NORI: 何人かいましたけど数えるくらいでしたね。オープンした最初のころは、黒人とスパニッシュと一部の白人だけって感じで、そんな中にキース・へリングがいたりして。彼はすごく目立ってましたね。当時のパラダイス・ガレージのこととかラリーのことは『マエストロ』って映画を見るとよくわかりますよ。あと最近、YouTubeにパラダイス・ガレージのクロージングパーティの様子がアップされてるみたいです。

-日本に戻ってこられたのはいつ頃ですか?

NORI: 90年の2月ですね。芝浦にあった「ゴールド」というクラブのオープニングと同時に話しをいただきました。その頃は高橋トオルさんと一緒にDJをやっていたんですが、2人で来て欲しいと誘ってもらいました。それで先にトオルさんがやり始めて、僕は遅れて参加しました。

-その当時のゴールドはやっぱりすごかったんですか?

NORI: そうですね。すごくおもしろかったですね。「東京」や「バブル」といった時代的なノリも大いに反映されていたと思います。それにハウスミュージック自体も確立された頃で、楽曲もすごくたくさんリリースされていました。ゴールドのスタッフも良いお店を作ろうってがんばっていたし、お客さんたちも心から楽しんでいました。毎週お祭りみたいに盛り上がっていて、いろいろな部分が絶頂だったと思います。良い時代でしたね。

-なるほど。それでは最後に、NORIさんのアナログレコードに対するこだわりを教えてください。

NORI: データでできた音はどうしても音質的な部分が好きじゃないんです。レコードの方がアーティストの思いが詰まっているような感じがします。もちろん良い音で聴くためには針だったり機材だったりに気を使っていかないとだめなんですが。自分にとっては30数年DJをやってきて、レコードで良い音を出していくという部分がこだわりになっています。

-そうですね。現場でアナログレコードをプレイしているDJに会うと、特別な感情が湧きますよね。

NORI: このお店でMUROくんと一緒にスタートした「CAPTAIN VINYL」というイベントも、レコードだけを使ってプレイしています。MUROくんとは何か一緒にやりたいなと思っていて、こういう大人が楽しめるラウンジはぴったりだなと。まだ始まったばかりですが、僕自身も今後が楽しみなイベントです。

cf_dj_nori_mix_profile.jpg BACK TO MY ROOTS
¥2,500 発売中

1. The Salsoul Orchestra Featuring Loleatta Holloway / Seconds (Shep Pettibone 12" Special Club Version)
2. The Strangers / Step Out Of My Dream (Shep Pettibone 12" Dream Version)
3. Logg / (You've Got) That Something (Greg Carmichael & John Morales 12" Version)
4. Skyy / Here's To You (Original 12" Version) 5. Rafael Cameron / Boogie's Gonna Get Ya (Francois Kevorkian 12" Instrumental Version)
6. Aurra / In The Mood (To Groove) (Original 12" Mix) 7. The Salsoul Orchestra Featuring Cognac / How High (Original 12" Version) 8. Bunny Sigler / By The Way You Dance (I Knew It Was You) (Unreleased Larry Levan 12" Remix)
9. Candido / Thousand Finger Man (Original 12" Version)
10. The Salsoul Orchestra / 212 North 12th
11. Claudia Barry / Sweet Dynamite (Tom Moulton Album Version)
12. Paul Mauriat And His Orchestra / Love Is Still Blue (Original 12" Version)
13. Loleatta Holloway / We're Getting Stronger (The Longer We Stay Together) (Walter Gibbons 12" Remix)

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TWEED RUN TOKYO 2013 「ツイード・ラン」は何が面白い? 3人の有識者が語り尽くします。 栗野宏文×菊池武夫×中室太輔

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ツイードを着て、自転車に乗り、集団で走る。言葉にすると「?」な催し「ツイード・ラン・東京」が、初開催となった昨年の好評を受けて、今年も開催されます! では一体、「ツイード・ラン・東京」は何が面白かったのか? 実行委員長を務める㈱ユナイテッドアローズの栗野宏文、昨年はスペシャルゲストとして登場したデザイナーの菊池武夫、そして昨年の参加者の1人である中室太輔(ムロフィス)の3人が、「?」の中身を丁寧に紐解いていきます。

Photo_Hideto Aida
Text_Mikiya Suzuki
Edit_Hiroshi Yamamoto

まずは栗野宏文と菊池武夫、2人の関係性について。

-「ツイード・ラン・トウキョー(TWEED RUN TOKYO)」のお話しを伺う前に、ファッション業界の重鎮である、菊池さんと栗野さんお二人の関係性について教えていただけますか?

栗野: 菊池さんは僕の大先輩というか。僕らがこの業界に入る前からご活躍されていた方ですから。関係性云々というよりも雲の上の存在です。もちろんお互いに以前から顔を知っていますし、共通の知り合いはたくさんいるんですけど、きちんとコミュニケーションを取るようになったのは、実はここ最近なんですよね。

菊池: 僕が海外の展示会に足を運ぶようになってからだから、ここ6、7年かな。海外で顔を合わせる機会が多いですよね。

-お互いの第一印象を伺ってもよろしいですか?

菊池: インテリジェンスがあって、趣味が良い。日本ではなかなかお目にかかれないセンスの持ち主ですね。バイヤーとして世界を舞台に戦えるのも納得できます。さらに文章も書ける。そういったセンスに惹かれて、雑誌でタケオ キクチの特集をしたときに執筆いただいたこともあります。

栗野: 僕の場合は、菊池さんご自身というよりも、40年位前に表参道のお店に訪れたのが、菊池さんの世界に触れた最初と言うべきかな。「ロンドンの空気を持った物作りをしている日本の侍がいる」という噂を聞いて足を運んだんです。まだ僕が学生の頃、1972年くらいかな。そのお店がとにかく格好良くて。

-こうやって一緒に取り組むようになって印象に変化はありましたか?

栗野: 変化というよりよりも、圧倒されますね。今なおパワフルで、とにかくスケールが大きい。

菊池: ツイード・ランのスタッフのなかでは僕が最年長ですからね。だからこそ頑張ってやろうかなと(笑)

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なぜ、ツイードを着る必要があったのか?

-それでは本題である「ツイード・ラン・トウキョー」について伺います。今年で2回目となりますが、そもそもの開催の経緯を教えてください。

栗野: 東京で仕事をしていると、漠然と東京の街を世界にどのようにプレゼンテーションすれば面白いのか、考えるようになるんです。そんななかロンドンでツイードを着て自転車に乗るイベントがあるという噂を耳にして、さらにJFWO(一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構)からMercedes-Benz Fashion Week TOKYO中の催しのアイディアを求められて。そこで1つのアイディアとして提案したんです。東京の街でツイードを着て、自転車に乗るのはどうか、と。自転車の安全走行を広めるとともに、街を走ることの楽しさも発信できますからね。

-なぜ、ツイードを着る必要があったのでしょう?

栗野: その光景を思い浮かべてみてください。味わい深いツイードの素材を身に纏った集団が、東京の綺麗な街並みを自転車で走る__。格好良くないですか?

-確かにそうですね。今までグループ・ライドはありましたが、ファッションを念頭においたグループ・ライドという目新しさもある。

栗野: そこなんです。エコロジカルでクラシックな自転車と、クラシカルでファッショナブルなツイード、この2つの要素は掛け合わせてみると実に相性が良いんです。しかも、東京の街並みにもハマる。

菊池: そして、こういった機会を提供するのも洋服屋の仕事なんですよね。僕らは商品を提供するだけではなく、着て行く場所まで提供しなければいけない。

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-Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOの期間中に開催する意図を教えてください。

栗野: Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOは、世界各地からジャーナリスト、バイヤー、エディター、フォトグラファー、多くの人が訪れる期間だからですね。影響力のある彼らに知ってもらうことで、東京という街を効果的にプレゼンテーションすることができる。

-大きな意味での街作りに「ツイード・ラン」がフィットしたということですね。ところでお三方ともにファッション業界でご活躍されていますが、一方の自転車についてはどういった認識をお持ちなのでしょうか?

中室: この業界に入る前に、池袋の自転車専門店に勤めていたんです。ホールディング・バイク担当で、アレックス・モールトンに憧れて、そこからロードバイクにもまたがるようになって。そこでモノを売る面白さに目覚めて、ファッションの世界に転身して。今でも雨が降らない限り、通勤は自転車を使っています。

栗野: 中室さんほど詳しくはないけど、乗るのは好きですね。ただ、昨年開催したときは、ここまで楽しい催しになるとは思いもしませんでした(笑)。ツイードを着て、自転車で走るだけではあるんですけど......。

菊池: 街を走るという単純な事柄に彩りを加えてくれるんです、ツイードという素材が。味わい深さがあって、とてもロマンティックな素材ですからね。男の根幹に響くというか。だからこそ、僕もツイード・ランに興味を持ちましたし。

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ツイード・ラン・東京の可能性。そして今後の展望。

-実際に昨年実施、参加されてみて、いかがでしたか?

中室: 楽しいです。本当に。見られる楽しさ、見る楽しさ、走る楽しさ。いろんな楽しさがある。ただ、昨年はどういうわけか僕と小木君(Poggy)だけ途中からハグれてしまって(笑)。今年は迷惑かけないようにしないとな、と。こうやって振り返ってみると、どんなスタイルで望むのか、考えているときも楽しかったですね。ちょっぴり緊張しながら集合場所に行って、みたいな。

-なかなかそういった機会は無いですもんね。栗野さんは実行委員長としていかがでしたか?

栗野: 街の風景が変わる可能性は感じましたね。大袈裟な言い方をすると、1979年にウォークマンが発売されて、人と街がガラリと変わったように。というのも、楽しみ方という部分では、自転車にとっても、洋服にとっても、新しい提案だと思うんです。しかも、自転車もツイードも身近な存在じゃないですか。だからこそ、こういった機会を誰でも気軽に作ることができる。ムーブメントとして発展を遂げれば、街を変えることもできるんじゃないかなと。

-ちなみに自転車とファッションというのはリンクする部分はあるのでしょうか?

菊池: 平坦な街だとハンドルポジションが高くて、それに伴って求められる洋服も変わってきますよね。アムステルダムなんて、まさにそう。そういった街の雰囲気がスタイルとなって出てくるんですよ。

栗野: 街と自転車とファッション、すべてが馴染んでいる都市というのはありますよね。ビジネスマンがスーツで自転車通勤しているのが格好良かったり。東京でもツイード・ランをキッカケに、街と共鳴した自転車スタイルが育ってほしいですね。

-今回のツイード・ランでは、みなさまどんなスタイルで望むのでしょうか?

中室: 去年は"BUSINESS"と文字が入ったハイソックスを履いて行ったんですよ。遊びじゃないぞ! って。今年はどうしましょうかねえ。どこかにヌケは作ろうと思ってはいるんですけど、それは現場のお楽しみということで(笑)

菊池: まだ決めてはいないんですけど、漠然とビジネススタイルで攻めようかと考えています。最年長の僕がビシっと決めて、周りを圧倒してやろうかと(笑)

栗野: クラシカルな素材とはいえ懐古主義でやっているわけではないので、どうやって今の雰囲気を出すか、ですよね。個人的にはエスニックなテイストとツイードの融合を模索中です。

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-参加者のスタイルを目にするだけでも楽しそうですね。それでは最後にツイード・ランの開催に向けて、メッセージをお願いします。

中室: 前回は諸先輩方に緊張したり、ハグれてしまったり。楽しかったにせよ、反省点も多かったので、今回こそ自転車とツイードの良さを伝える気持ちを持って参加したいですね。そして年々、参加者が増えてくれると嬉しいです。

菊池: 一番は自転車とファッションともに楽しむこと。積極的に参加してもらい、体感してもらいたいですね

栗野: 格好良いモノではなく、楽しいモノとして定着させたいですね。ファッションというのはどうしてもクールになり過ぎてしまう傾向がある。そこを自転車というフィジカルな体験とミックスさせることで、双方の良さを知ってもらえたら嬉しいですね。

-最後にツイード・ランの今後の展望を教えてください。

栗野: 実は東京に続いて名古屋での開催も決まりました。"DO IT YOUR TWEED RUN"じゃないですけど、安全で楽しく、そしてファッショナブルに楽しめるイベントなので、どんどん拡がっていってほしいですね。秋はツイード、春はデニム、といった具合に。まだまだいろんな可能性があるんじゃないですか。

Tweed Run Tokyo 2013
日時:10月14日(月・祝) 9時~14時(予定)
9:00 シェアードテラス 外苑いちょう並木に集合
10:00~12:00 東京都内をグループライド
12:30~14:00 ティーパーティー
※荒天の場合、自転車の走行は中止して、別の企画を準備しております。
場所:港区、千代田区、中央区など
スタート地点/シェアードテラス 外苑いちょう並木 港区北青山2-1-15
ゴール地点/銀座三越 中央区銀座4-6-16
参加料:¥5,000 ※参加受付は終了しました
ドレスコード:ジャケット、パンツ、ベスト、アクセサリーなどで、ツイード素材のアイテムを身につけること

Tweed Run Tokyo が掲げる5つのこと
1.自転車の正しい乗り方、マナーをPR
2.自転車ユーザーに交通ルール遵守を訴求
3.東京を、楽しく自転車で走ることができる街として国内外に発信
4.自転車をもっと楽しむために、おしゃれをして走ることを提案
5.ファッションのひとつのジャンルとして確立させ、ファッション産業を活性化

The Tweed Run(ロンドン) 公式サイト
tweedrun.com
Tweed Run Tokyo公式サイト
tweedruntokyo.com

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ジャズとヒップホップを結ぶ新世代ピアニスト、ロバート・グラスパーを直撃!

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ジャズとヒップホップを自在に体現し、音楽シーンに旋風を巻き起こしてきたロバート・グラスパー。近作『ブラック・レディオ』でグラミー賞も獲得した彼は、一体どんな人物なのだろうか? ルーツは? 曲作りのスタイルは? 東京・青山のジャズクラブ「ブルーノート東京」でのライブのために来日したロバートを直撃。彼の大ファンであり、人気ブランド〈ノンネイティブ(nonnative)〉のセールスにして、セレクトショップ〈ベンダー(vendor)〉に並ぶCDもセレクトする"業界きっての音楽フリーク"福永良輔が、希代の天才ピアニストに問いかける。特にヒップホップ好きは必読!

Photos_Munehiro Saito[S-14]
Interview&Text_Ryosuke Fukunaga
Edit_Masaki Hirano

影響を受けたヒップホップのアーティストは? よく聞いたアルバムは?

福永: 昨夜の「ブルーノート東京」でのステージを見させてもらったんだけど、そのときに着ていた"RAP-LIES=HIPHOP"というTシャツが印象的でした。今日もJ・ディラのTシャツを着ているよね。何か特別な思いがあるの?

ロバート: J・ディラとは一緒に仕事もしたことがあるんだけど、僕がいちばん好きな、そして最高のビートメイカーだよ。

福永: J・ディラは最高だね。ヒップホップにも精通するロバートから見て、最近のヒップホップシーンはどう思う?

ロバート: 正直に言うと、長い間、ヒップホップのシーンには飽き飽きしていたんだ。どのアーティストも語っている内容が、女性や宝石、クルマ、お金のことだったり。みんな同じことばかりを言っていてつまらなかった。いわゆるリリシストという存在がいなくなっていた期間がすごく長かった。でもこの間、ケンドリック・ラマーがすごく激しい曲を出して、多くのラッパーを敵に回したよね。(※下記参照)あの曲が世に出たことで、特に若いラッパーたちが刺激を受けて目を覚まして、「くそー!」という気持ちになっていると思うんだ。だからこれからまた、本当のリリシストが新たに誕生したり、そういうラップを聴かせてくれる人が出てくるんじゃないかな。良い意味でヒップホップの再来が始まると思うよ。

※ビッグ・ショーンの"Control"という曲にフィーチャリングされたケンドリック・ラマーが、自分のヴァース部分で、「俺はNYのキング」、「みんなやっつけてやる」と仲間のラッパーたちの実名を挙げて挑発。リリースされてすぐにネットは大騒ぎに。名指しされたラッパーたちはもちろん、たくさんのヒップホップアーティストたちがツイッターで反応。今年8月の出来事。曲は下からどうぞ。

福永: なるほど。僕は特に90年代の前半から中盤のヒップホップが好きで、昨日のライブに来ていたお客さんたちの多くもおそらく同じような人たちだったんじゃないかと。ロバートが作る曲やライブには、そういうヒップホップな要素が感じられる部分があって、そういうところにシンパシーを感じている人がたくさんいると思うんだ。もしよかったら、影響を受けたヒップホップのアーティストや、よく聞いたアルバムを教えてよ? まあ、それ以外も含めてもいいんだけど、よく聞いたのって何?

ロバート: アーティストだと......オスカー・ピーターソン、チック・コリア、ビリー・ジョエル、ブルース・ホーンズビー、ア・トライブ・コールド・クエスト、バスタ・ライムス、DJプレミア、ピート・ロック、アニタ・ベイカー、ルーサー・ヴァンドロス、ハービー・ハンコック、カーク・フランクリン、他にもレディオヘッドやビョークも聴くよ(笑)。

福永: いいね、いいね。じゃあアルバムではどう?

ロバート: ビリー・ジョエルの『ストーム・フロント』 、チック・コリア・アコースティック・バンド『アライブ』、レディオヘッド『アムニージアック』、ア・トライブ・コールド・クエスト『ミッドナイト・マローダーズ』、ピート・ロック『ピートストゥルメンタルズ』あたりかな。

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発売間近『ブラック・レディオ2』のこと。そしてもっと先のこと。

福永: たくさんのアーティストと一緒に曲作りをしているけど、その経緯なんかはどういったものなの?

ロバート: 最初の『ブラック・レディオ』に参加してくれたアーティストは、みんな知り合いだね。自分でメールを送ってお願いしたよ。もうすぐリリースされる次のアルバム『ブラック・レディオ2』は、半分は個人的な知り合いで、残りの半分は知り合いではない人たちだった。ただ、グラミー賞を取ったことで、向こうが僕のことを知ってくれていて、話しがとてもスムーズに進んだんだよ。

福永: なるほど。そういう意味でもグラミー賞の影響は大きいんだね。

ロバート: お願いした人たちみんなが、僕の次のアルバムが音楽業界において、重要なポジションに位置するだろうと思ってくれたんだと思うんだ。僕が参加してほしいと思うアーティストは、それぞれがオリジナルのサウンドを持っている。それが選ぶ条件でもあると思うよ。特にこの業界は誰かの真似をする人が多くなっていると思うからね。

福永: オリジナルの音楽を作るためのインスピレーションや原動力はなに?

ロバート: いろいろなタイプの音楽やアーティストに影響を受けてきたから、誰か特定のアーティストをコピーしようと思ってもできないんだよね。好きなものがあまりにも多いし、何をコピーしていいのかわからない。結局はいろいろなものに影響を受けて、自分の音楽を作っていくしかないと思ってるよ。例えばミックスジュースで考えてほしいんだけど、リンゴとオレンジしか持っていなかったら、いつも同じ味にしかならないよね? でもそこにイチゴやキウイ、マンゴー、野菜があれば、ジュースの味も無限に広がる。そうやって組み合わせていくことで、自分の音楽ができる。それがオリジナルの音楽なんだと思う。

福永: 曲作りの行程をもう少し具体的に教えてもらえるかな? ピアノを弾きながら作るの?

ロバート: ピアノの前に座った瞬間に、魔法のように曲が浮かぶ人もいると思うけど、僕はそういうタイプではないね。バスに乗っているときや、バスケットボールをしているとき、シャワーを浴びているとき、そんな日常の瞬間にフレーズが浮かんできて、それをボイスメモに鼻歌などで残すんだ。それを家で聴き直してピアノで組み立てていくよ。2003年からすべてのアルバムをこのやり方で作ってるよ。

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福永: 『ブラック・レディオ2』の発売前ではあるんだけど、このアルバムの後はどんな動きになっていくの?

ロバート: まだ内容はまったく考えてないんだけど、この次も恐らくコラボアルバムになると思う。あと、いずれゴスペルものもやってみたいと思ってるよ。今回の『ブラック・レディオ2』が、どのくらいの人に受け入れられるのか、どんな評価を受けるのか。それによって次にどんなアルバムを作りたくなるのかが決まってくると思う。やっぱりひとつの作品をリリースするたびに、自分の立ち位置や状況もいろいろと変化すると思うからね。せっかく上がっていっても、それまで積み重ねてきたことを大事にせずに、まったく違ったことをやるとすぐに落ちてしまう。僕はいつもホットでいたいから、このアルバムが僕をどこに導いてくれるのか、その先でどんなことを考えるかによって今後の動きも決まってくると思う。

福永: ちなみに、音楽以外に興味のあることはある?

ロバート: スポーツと映画かな。いつかは映画のスコアを作りたいという気持ちがあるんだ。だから映画やドラマは常にチェックして勉強しているよ。

福永: それでは最後に。長期的に考えて、どんなアーティストになっていきたいと思ってる?

ロバート: 難しい質問だなー。例えば、クインシー・ジョーンズのようなアーティストかな。彼のように現役を退いてしまうのではなく、ずっと演奏し続けていきたい。あ、ハービー・ハンコックとクインシー・ジョーンズを足して2で割ったようなアーティストがイメージに近いかもしれないね。

ロバート・グラスパー
1978年4月6日、テキサス州ヒューストン生まれ。ピアニスト、作編曲家。母親の影響で、一家が住む教会でピアノを弾き、ゴスペルやジャズ、ブルースといった音楽に触れる。青年期に入り、ヒューストンの有名なハイスクール・フォー・ザ・パフォーミング・アーツへ入学。卒業後、マンハッタンのニュー・スクール・ユニヴァーシティに入学。在学中にクリスチャン・マクブライド、ラッセル・マローン、ケニー・ギャレットなどとギグを行う。その後、ニコラス・ペイトン、ロイ・ハーグローヴ、テレンス・ブランチャード、カーメン・ランディ、カーリー・サイモン、ビラル、Qティップ、モス・デフなど、ジャズ~ヒップ・ホップまで幅広い分野の面々と共演する。

2003年、デビュー・アルバム『モード』(フレッシュ・サウンド・ニュー・タレント)をリリース。2005年、ブルーノートと契約。同年、移籍第1弾『キャンバス』をリリースし、ジャズやゴスペル、ヒップホップ、R&B、オルタナティブなロックなどのエッセンスを取り入れた革新的なスタイルで、各方面から高い評価を得る。2007年、ジャズとヒップホップを結びつける究極のピアノ・トリオ作『イン・マイ・エレメント』を発表し、ブルーノートの新世代ピアニストとしてさらに注目を浴びる。2009年、よりアコースティック志向の"トリオ"とよりヒップホップ志向の"エクスペリメント"の自身が推進する2つのバンドを1枚に集約した、グラスパー本来の姿を投影した話題作『ダブル・ブックド』を発表。エリカ・バドゥ、モス・デフなど彼と交流のあるシンガー、ラッパーをフィーチャーし構成された作品は多方面から絶賛され、米ビルボード誌のジャズ・チャートで1位、さらに第55回グラミー賞(2013年2月)では最優秀R&Bアルバムを獲得。最高の栄誉を得た。そして2013年10月23日に、続編となる『ブラック・レディオ2』をいよいよ発売する。
www.universal-music.co.jp/robert-glasper/

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続・今月の顔。vol.8 女優 有村架純

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NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』で小泉今日子さん演ずる"春ちゃん"こと天野春子の若年期を演じ、話題を集めた若手女優・有村架純さん。そんな彼女の原点ともいえる作品『SPEC』シリーズの最新作『劇場版 SPEC~結~』が11月1日(金)から公開されます。様々な作品でアイコニックなキャラクターを演じてきた有村さん。そのきっかけとも言える役柄「正汽 雅」を3年という月日を経てどのように演じているのか。作品への思いと共に語ってくれました。

Photo_Megumi Seki
Edit_Masaya Umiyama

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フォトグラファー水谷太郎が初となる個展「New Journal」を開催!

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ファッション誌のエディトリアルやファッションブランドの広告を中心に活動するフォトグラファー水谷太郎氏が、自身初となる個展を開催。旅の中で記録した作品を、ネイチャーフォト、ファッションフォト、ソーシャルランドスケープの3つに分け、それらを「New Journal」と銘打ち展示する。4人の写真家と共に開催した合同写真展「流行写真」からわずか8ヶ月。今回の単独展にはどのような思いが込められているのだろうか? 聞き手は水谷氏をよく知る、アートディレクターの永戸鉄也氏。距離の近い2人だからこそ聞ける、話せる内容に、"ファッション写真"のこれからを思い做す。

Interview_Tetsuya Nagato
Edit_Masaki Hirano

あくまでも商業ベースのファッション・フォトグラファーであるという自覚。

永戸氏(以下永戸/敬称略): 今回「New Journal」という個展を11月1日から開催されるそうですが、どのような経緯で、この個展を開催することになったのか。そこから教えてもらえますか?

水谷氏(以下水谷/敬称略): 今年の3月に開催した「流行写真」というグループ展を見てくださった、「Gallery 916」のキュレーター後藤繁雄さんから声をかけていただいて、その後、オーナーの写真家の上田義彦さんに展示内容を提案しました。「Gallery 916」のメインルームの方で、操上和美さんの個展は決まっていて、小さい方のギャラリーsmallでやりましょうという感じで話しが進んでいきました。

永戸: なるほど。太郎くんは「Gallery 916」のことは知っていた?

水谷: はい。展示を見に行った事もあるし、以前に撮影で使ったことも。

永戸: そうなんだ。

水谷: はい。それに、いま東京にある写真のギャラリーで、いちばん大きくて話題性のある場所だと思うので、お話しをいただき光栄だなと。

永戸: 操上さんと一緒にやることに関して何か思うことは?

水谷: いや~。恐れ多いというか。ただ隣のスペースでやるだけなのですが、緊張とか光栄とか、操上さんと一緒ということに何かしらのプレッシャーを感じてますね。

永戸: 次世代の操上和美は俺だというような......(笑)。

水谷: いやいやいや(笑)。そんなことは全くないです。でも操上さんは商業写真をベースにしていて、コマーシャルフォトのトップランナーだと思うんです。僕もいわゆるファッションとかコマーシャルな写真家だと思っているので、そういう共通性みたいな部分にはおもしろ味というか、キュレーション側の意図があるのかな? とか、変な深読みはしましたけどね。

永戸: それはあるのかもしれないね。916は単純なギャラリーっていうだけではないよね。何と言っても写真家・上田義彦さんがやっているわけだし。

水谷: そうですね。この個展をすごくクラシックな写真ギャラリーでやるっていうのとは、多少自分のモチベーションとか意味合いも大きく変わってくると思うんです。

永戸: はい。

水谷: そういう意味では、割とすんなりやろうかなと思いました。

永戸: 今の太郎くんには最高のリングが用意された感じだよね。

水谷: 感謝しています。

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永戸: じゃあちょっと。話しを先に進めていきましょう。今回先に一部の展示作品や会場の展示模型も見せてもらったわけですが、3方向の被写体になっている意図というか、事前に3つの被写体でいこうと思ってたのか。もしくは、やっていくうちにその3つになっていったのかを教えてもらえますか?

水谷: うーん。いちばん最初に話をもらったところから思い返すと、最初は何かアーカイブの中からやろうかなとも思っていたんです。

永戸: うん。

水谷: ただ、僕の今までのキャリアを考えると、写真作家ではなくてあくまでも商業ベースのファッション・フォトグラファーだっていうところを明確に思うところがやっぱりあって。途中の段階でアーカイブというよりは、今おもしろいものとか瞬発的に撮ったものとか、そういうものをまずは素直に出そうと思ったんです。そこでひとつの明確なコンセプトができあがった感じです。

永戸: そうなんだ。

水谷: そう思ったときに、ファッションとかネイチャーフォト、社会的な風景みたいに、ジャンルやボーダーみたいなことで被写体を分けることを、自分の中ではそんなに意識してないところがあることに気がついたんです。今何がおもしろいかってことをダイレクトに考えたときに、いろんなところの被写体があったんです。自分自身がそう思ったということは、そういう展示があっても今の僕だったらありなんじゃないかっていう。まあ過程の中で段々そういう考えになっていったということですね。

永戸: 僕はそれを見せられて、太郎くんにヌケ感を感じたんですよ。清いなっていうか、自分のスタンスをここまで明確に提案するんだっていうところに。

水谷: うーん。

永戸: このスタンスさえ分かっちゃえば、もう敵はいなくなるんじゃないかな? みたいな気がしたんですね。

水谷: なるほど(笑)。

永戸: 撮れるものはみんな撮ってるわけじゃない? あとはどう自覚して見せて行くか、だと思うんだ。

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「New Journal」という言葉の真意とは......?

永戸: それで、今回の個展のタイトル「New Journal」という言葉もおもしろいなあと思ってるんです。

水谷: うんうん。

永戸: 実はそれが次の質問なんですけど。「Journal」という言葉は、大体「報道」、「新聞」、「雑誌」などの定期的な情報や出版物みたいなものを指すんですけど。もう少し調べてみると、コンピューターのファイルの変更履歴とか格納領域みたいな意味もあるんですよ。

水谷: そうなんだ(笑)。それは知らなかったですね。

永戸: おそらくは更新していくという部分に、「Journal」という言葉のポイントがあるってことなんだと思うんですね。

水谷: はい。

永戸: そういった、新しいジャンル感、みたいなネーミングがキュレーター・編集者である後藤さんの真骨頂だとも思うんです。

水谷: そうですね。

永戸: その前になんか、何とかワイルドネスみたいな案もなかった?

水谷: ありました。「New Wildness(ウィルダネス)」みたいな。新しい野生とか新しい自然みたいな。そういうところからスタートした言葉ではありますね。

永戸: だけども、「Journal」は自然も含む訳じゃないですか。結局そこにはファッションも、アートも、自然も、全部「Journal」だって言い切っているのかなと。そしてそこに「New」って言葉を付けることで、さらに抽象的に見えるというか、テキストではなく図案だったり画像でイメージできるところに持っていこうとしたんだと思うんです。

水谷: そうですね。まさに、そういうことだとは思うんです。自分の意識としては「Journal」という言葉の捉え方としては、私的な「日記」みたいな言葉のニュアンスもあると思うんです。「New Journal」だから新しい日記。自分自身の環境や状況から見えてくる被写体、瞬発的につかむ時代性というか目線からでもいいのかなって感じました。タイトルに関しては、後藤さんとの話し合いの中で気に入ったというのはもちろんなんですが、これまでの写真史を振り返っても、今のスピード感ってすごく早くなっている時代だと思うんですね。

永戸: うん。

水谷: 例えば、ある写真作家が10年20年同じテーマで根を詰めて撮った作品の力っていうのは、普遍的な良さがあると思うんですけど、今は世界的に見ても、もっとフットワークの軽い作品がたくさんありますよね。ZINEのブームみたいなものも、もしかしたらそういうところと関連があるように思うんです。フェイスブックとかインスタグラムみたいなものがあって、写真がその場でどんどん共有されて「いいね!」ってシェアし合う。そういうスピード感で写真が扱われてく時代の中で、写真家も今だからこそどういう表現がおもしろいのかみたいなことを考えられたらいいなと思うんです。

永戸: なるほど。じゃあ今回の個展は、従来の展示方法だけど、込めた思いは今までの展示からはちょっと違う方向性を模索し始めているということ?

水谷: というところはかなりありますね。今の自分を考えた上でのは。

永戸: で、前回の「流行写真」をやってからこの展示までって、けっこう早かったと思うんだけど。

水谷: 早かったです。もう「流行写真」が終わって1ヶ月後ぐらいに今回のお話しがあったので。

永戸: なるほど~。ということは、1人抜け出たわけだ。

水谷: そういう意味ではとらえてないですよ(笑)。「流行写真」の展示をきっかけに得るものも多かったですが、同時にあぶり出された事も多かった。つまりは作家宣言なんてできないし、する必要もない。単純にここから自分でどうするかっていうことを明確にビジョンとして持ってなきゃだめだなと思ったんです。

永戸: 「流行写真」の後の打ち上げで、僕は太郎くんの写真を"上質なストックフォト"という言葉を使って評したんだけど。多分、太郎くんって何を撮っても絶対に重くならないっていうか、重厚な写真は撮れないし、撮らないなと。誰が撮っても重くなってしまう被写体があったとしても、太郎くんだとライトに撮ってしまう特殊な人のような気がするんだよね。どんなに踏み込んでも、ストックフォトはストックフォトだろうって言われてしまうような軽さの部分と、太郎くんの写真がちょっとつながるように感じられて。作家なのにストックフォト的というか、そのあり得ない組み合わせが、実はちょっと新しいおもしろさだなって僕は感じているんです。

水谷: 永戸さんらしい解釈(笑)。

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永戸: で、その大衆性というか、ある種の軽さの部分がファッション性なのか、もしくは今の時代の画像や写真の扱い方とかにも似ている気がして。太郎くんは自分自身の写真をどういう写真だと思っているのかな?

水谷: そういう意味では、やっぱり自分はファッション・フォトグラファーなんだろうなっていうのはすごく思いますね。この先にどう思っていくのかは分からないですけど、現時点ではやっぱり商業写真家だしファッション・フォトグラファーだなっていうことを「流行写真」のときにも再確認したし、だから今回は自信とか自覚を持って、何ができるのかを考えられたと思います。永戸さんに"上質なストックフォト"って言われたときに、どこかでショックだったんですね。でもよく考えてみれば自分の写真は今まで、求め求められるクライアントとの関係で生まれてきたもので、自己表現ではあるけれど、依頼があるなかで成立させていくでしたし。

永戸: うんうん。

水谷: そう考えたら、その"上質なストックフォト"っていう言い方は、もしかしたらすごいポジティブな言い方なのかもしれないなって、自分で消化しちゃったところはありますね。

永戸: そうだね。「流行写真」という言葉の提案と一緒で、一周半まわって、ポジティブな意味合いでとってもらえればいいかなと(笑)。

水谷: 大衆性とか時代性みたいなものは、写真家が捉えるべき対象であるっていうのは間違いないし、それが写真作家であろうとファッション・フォトグラファーであろうと、同じ時代性をくみ取るっていうことに関しては、とても写真的なことであると思うんです。

永戸: 重厚さや、文学のような写真と、片やペラペラな画像で日々撮って捨てられていくような、インスタグラムやプリクラみたいな画像も、同じ時代の画像としてあるわけで......。

水谷: ジャパニーズフォトは海外からすごく評価されていると思うんですけど思うんです。ニューヨークとかヨーロッパの写真のシーンを見ていると、既存の概念を壊したおもしろいことをやっている人たちがいるし評価されはじめているし、そういう人たちの受け皿もある。この先、日本もそうなってくれば、ギャラリーとかメディアの中で、もっとやれることがあるだろうなって感じていたりもしますね。雑誌に出るファッション写真はより写真的なものを欲しているし、ギャラリーに並ぶ写真は強い同時代性やスピード感やストリート感を欲していると思います。

永戸: なるほど。ギャラリーに所属したいと思っている若い作家よりも、ファッション写真家を志してる人の方が未来があるかもしれない、と?

水谷: って、そんな大それたこと言ったら、ちょっと大変なことになるんですけどね(笑)。でも世界を見てみると、日本でも有名なライアン・マッギンリー、ティム・バーバーやアレックス・ソスしかり、多角的で早い印象がまずありますよね。

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美術系の写真家たちは、ちょっと脅威に思う部分もあるかもしれない。

永戸: 今回の個展で、どれぐらいプリント売れるだろうね?

水谷: いやいや(笑)。でも、ちょっとおもしろいところだなって思っているのが、「流行写真」のときは、ファッション関係の人たちがたくさん来てくれたんですけど、「Gallery 916」は写真のギャラリーなのでどうなんだろうと。というか、ほとんどは操上和美さんの写真を見に来る人たちだと思うんですよ。で、その800円の入場料を払って、僕の写真もついでに見てもらえるっていう(笑)。

永戸: そうか。あれは太郎くんへの入場料じゃないわけだ。

水谷: そうなんですよ。だから自分的にはそこはすごくおもしろい。僕のことを知らない人が僕の写真を見てどういう風に感じてくれるんだろうと。こいつの作品そこそこ良いし、安いから買ってみようかな? みたいな人が出てきてくれたら、ちょっと嬉しいですけどね。

永戸: それは出てくるんじゃないかな。

水谷: そうですかね。

永戸: と、思うけどね。では次の質問に行きます。太郎くんはファッション・フォトグラファーとして仕事をしているわけですが、撮影する側として東京の今のファッションについてどのように感じていますか?

水谷: そうですね。ファッションって最終的になんなんだろうってことを考えたときに、スタイリストの山本康一郎さんが言っていた「出かけたくなることじゃないかな」って言葉がすごく心に残っているんです。出かけたくなるような高揚感とかを写真を使って伝えられることが、いわゆるファッションとかファッション写真につながっていくのかなっていうのは未だにありますね。

永戸: なるほど。

水谷: だから自分が旅行に行って写真を撮ったりしても、どこかでファッションっぽく見える瞬間があったりして。そういうのがあるから「出かけて~」みたいな願望がいつもあるというか。

永戸: そういう感じに太郎くんの軸があると思うんだよね。例えば、旅だったり、聴いてる音楽だったり、考え方だったり、何かを食べながらラフに歩いてるみたいな雰囲気がね。

水谷: ほんとですか?

永戸: だから旅に行って普通に風景を撮っても、言わなくてもファッションだよっていう雰囲気が漂ってるっていうのは、そういうことだと思う。決して冒険家が撮った写真じゃないよね。

水谷: そうですね。例えば今撮った写真は2013年に自分が見た風景であって、それってすごい写真的だなと思うんです。その瞬間にしかないという点ではファッション的であって、時代性みたいなことと総括するとリンクしていて、自分の中ではすごくダイレクトなことなんです。今ここがおもしろいから行ってみよう、みたいな。

永戸: うんうん。それで今回、白い看板を撮ったり。知床まで行ったり。〈アンダーカバー〉の服を借りて撮ったり。それらが全部作品になっている。ということだと思うんだけど。

水谷: そうですね。

永戸: そこがおもしろいと思うんですよ。人によってはそういうことはしないし、線引きしてただろうし。でも、太郎くんの中では展示しますと言ったらすべてが作品になってしまう。

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水谷: うーん。何て言うか、自分の写真を高尚な芸術に昇華させようって気持ちはまったくなくて。さっきの話しとも重複するかもですが、写真を取り巻く環境はもっといろんなメディアというか多角的であっていいと思っているんですね。自分が撮るものは仕事でもプライベートでも自分の写真だし、それは揺るがない。それがどう変化していくのかを客観的に見るのはすごく普通なことなんです。

永戸: うん。でも多くの人は分けてきたんだよね。

水谷: 「流行写真」以降、もっと自由でいいんだって思っちゃったんです。

永戸: そこが明確になっちゃったわけだ。別に俺こういうやつだからいいやって......?

水谷: すごく明確になりましたね。「流行写真」をやったことで、WATARUさん、モーリー(守本勝英)、荒井ちゃん(荒井俊哉)には自分には無いもの見せつけられました。いろんな人がいる中で、こんな自分のスタイルがあってもいいよなって思ったというか。

永戸: "どの方向に行っても良い写真家である"と自ら指針を打ち立てたわけだ。

水谷: なんかそういう風になれたらいいなと思って動いてますね。まあ今後どうなることやらですけど(笑)。

永戸: まあ、ある程度いけると思いますよ(笑)。写真はもう間違いないし、色々な提案もできそうな感じだしね。あとはもう太郎くんの心持ちがここからどうなっていくかでしょう。個展もきっと成功すると思います。

水谷: ありがとうございます。

永戸: でも、ファッションの写真家からは、先に行かれたと思うだろうし、美術写真の人たちも、ちょっと脅威に思う部分もあるかもしれない。だって、いつもいろんな被写体を撮っていて、しかもTシャツの写真だって撮る。バンバン作品を出してきて、ついにこのフィールドにまで来てしまったぞと。

水谷: そのくらいになれたらおもしろいですね。

永戸: きっとなっていくでしょう。

水谷: はい。がんばります。

永戸: 楽しみです。

水谷太郎 フォトグラファー 1975年東京都出身。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、自身の 写真家活動を開始し現在ではファッション雑誌、ファッションブランドの広告 やアーティストのポートレイトなどを中心に活躍。2013年3月、4人のファッシ ョンフォトグラファーによる合同写真展「流行写真」に参加。作品集に『Here Comes The Blues』。be Natural management所属 www.bnm-jp.com

永戸鉄也 アートディレクター 1970年東京都出身。高校卒業後渡米、帰国後96年よりジャケットデザイン、ミュージックビデオのディレクション、広告やドキュメンタリー映像制作等に携わる。作家としてコラージュ、写真、映像作品を制作。個展、グループ展にて発表している。2013年3月の「流行写真」ではクリエィティブディレクターとして参加。www.nagato.org

水谷太郎 写真展『New Journal』
会場_Gallery 916 small
住所_〒105-0022 東京都港区海岸1-14-24 鈴江倉庫第3ビル6F
tel_03-5403-9161
会期_2013年11月1日(金)~11月23日(土)
開館時間_平日 11:00~20:00/土曜・祝日 11:00~18:30
休廊_日曜・月曜
入場料(18歳以上のみ)_一般¥800、学生¥500(Gallery 916 及び 916 small)
gallery916.com

※メインルームの「Gallery 916」では、写真家・操上和美氏による個展 『PORTRAIT』を同時開催。 会場では、今回の水谷太郎 写真展図録『New Journal』を500部限定で販売。

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CUTIE AND THE BOXER ギュウちゃんと乃り子。

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ニューヨークを拠点に活動する現代芸術家、篠原有司男、通称ギュウちゃん。その妻の乃り子は、妻として、母として家計を支え、ときにはアーティストとして自らを表現してきた。そんな2人の夫婦生活に迫った映画『キューティー&ボクサー』が公開中。さらに各々の作品を展示した二人展『Love Is A Roar-r-r-r! In Tokyo 愛の雄叫び東京篇』も開催中。フイナムでは同エキシビションに携わった古藤寛也さんをインタビュアーに迎え、ともにアーティストとして活躍する奇妙な夫婦関係に迫ります。

Photo_Miri Matsufuji
Interview_Hiroya Koto
Edit_Hiroshi Yamamoto

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Ken Kagami Presents BIHIN BOYS アーティスト・加賀美健による「備品ボーイズ」。

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アーティスト・加賀美健の連載企画「STRANGE SPACE」。最近めっきりご無沙汰の同企画に変わってお届けするのが今回の「備品ボーイズ」。フイナム編集部内にある備品を加賀美さんがスタイリング! 写真家・題府基之が撮り下ろします。即興で作られた20を超えるルックはファッションなのか、アートなのか。大人の事情も考慮しつつ、創造力を働かしてお楽しみください。連載企画同様、加賀美さんの責任編集でお届けします。

Direction_Ken Kagami
Photo_Motoyuki Daifu
Edit_Hiroshi Yamamoto

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フイナムテレビ ドラマのものさし

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ドラマから流行語が生まれたり、なにやらテレビドラマの周辺が騒がしい。実際見応えのあるものも多く、「映画は観るけどドラマはちょっと...」なんて言って食わず嫌いしているのはもったいない。でも、すべての連ドラをチェックするのは物理的に無理。しかも、高視聴率だから面白いかといえば、実はそうでもなかったりするから話はややこしい。そこで、ほんとうに面白い、いま見ておくべきドラマを独自の視点で採り上げていくのがこのコーナー。ブッタ斬りでもメッタ斬りでも重箱の隅つつき系のツッコミ芸でもなく。そのドラマの「何がどう面白いのか」「どこをどう面白がるべきか」をふんわり提示する、普段ドラマを見ないひとにこそ読んで欲しいドラマ・ウォッチ・ナビ!

Text_Shin Sakurai
Design_Shogo Kosakai[siun]

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2014 JAN~MAR VOL.01
通常、テレビドラマは3カ月に一度入れ替わるが、新ドラマの初回を見逃すと、次回以降見る気が失せるのはよくある話。ということで、2014年1月スタートの新ドラマの中から、「とりあえず初回だけでも予約録画しておいたほうがいいドラマ」をセレクトしておく。もちろん、リアルタイムで見ることが可能であればなるべく録画せずに見るべし。録画が溜まるとだんだん見るのが億劫になるものだ。
フタを開けてみないと何とも言えないのがドラマの面白さであり怖さでもあるのだが、事前情報や過去のデータなどから読み解くと、こんな感じになる。
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公式HPより
『なぞの転校生』テレビ東京 1/10スタート 金曜24:12~
原作は1967年発表の眉村卓によるSFジュブナイル小説。1975年、NHKがウイークデイの夕方放送していた帯番組「少年ドラマシリーズ」枠でドラマ化され人気を博した作品なのだが、そんな昔の話をなぜ今? と、まさにクラスに突然なぞの転校生がやってきたかのごとく不思議がっていたら、企画プロデュースと脚本を映画監督の岩井俊二が手掛けると知り、ははーんと腑に落ちた。
岩井俊二はまさにこのドラマをリアルタイムで見ている世代だし、しかも、「高度に進んだ文明を築いたがゆえに核戦争を引き起こし別次元の世界から避難してきた民」という設定は、福島の原発事故とそこから避難した人たちをどうしたって想起する。岩井は宮城県の出身で、NHKの東日本大震災復興支援ソング『花は咲く』の作詞も手掛けている。当然、今この話をやる上で、核に対する危惧を込めるであろうことは想像に難くない。
もちろん原作小説もNHKのドラマも、あからさまな反核思想などではなく、ある日突然やってきた異能者が日常に揺さぶりをかけるという、基本的にはSFやサスペンスのかたちを取りつつ、行き過ぎた現代文明に警鐘を鳴らすというメッセージが背後に置かれている。実は、まさに今描くべきテーマが内包された話だといえる。
主人公・岩田広一に中村蒼、なぞの転校生・山沢典夫に本郷奏多という若いけれどキャリアのある2人を配しているが、注目は岩田と幼なじみの香川みどりを演じる桜井美南(みなみ)。これがドラマ初出演となる桜井は、鈴木杏、北乃きい、南沢奈央を輩出したキットカット受験生応援キャラクターの5代目にあたる16歳(ちなみに4代目は2013年注目を集めた刈谷友衣子)。
しかも岩井俊二といえば、自身の映画で奥菜惠や蒼井優をブレイクさせた「女の子を見る目が確かな」監督。予告動画以外、動いている姿をまともに見たことがないうちからこんなことを言うのもナンだが、おそらく逸材に違いない。
とはいえ、岩井はプロデュースと脚本のみで、演出は『夜のピクニック』などで知られる映画監督の長澤雅彦が手掛ける。これまで大根仁監督の『モテキ』、園子温監督の『みんな!エスパーだよ!』などを放映してきたテレ東深夜の「ドラマ24」枠で岩井俊二&長澤雅彦とくれば映画好きも必見だ。
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公式HPより
『失恋ショコラティエ』 フジテレビ 1/13スタート 月曜21:00~
いわゆる月9。と言っても、最近の月9はかつてのトレンディドラマの流れを汲む王道の恋愛ドラマを放映する枠では既になくなっていて、『鍵のかかった部屋』『ビブリア古書堂の事件手帖』などライトなミステリィ物も多く、バラエティに富んでいる。
2012年夏、この枠で放映された『リッチマン、プアウーマン』(小栗旬、石原さとみ出演)も一見王道の恋愛物のようでいて、「就職が決まらない高学歴女子とIT企業を起ち上げ成功を手にした若き経営者との格差恋愛」を題材にした、恋愛+起業物というあたらしい手触りのドラマだった。Facebookの創業者、マーク・ザッカーバーグをモデルにした映画『ソーシャル・ネットワーク』に韓流ドラマをプラスしたような、と言ってもいい。
とりわけ、一筋縄ではいかない安達奈緒子の脚本が秀逸だったのが、『失恋ショコラティエ』は、その安達が脚本を手掛けていることからも要注目。原作は累計100万部を記録する水城せとなの人気コミックだが、こういう場合、何かと原作ファンからは厳しい声が上がるものと想像される。むしろ原作を未読のひとのほうがすんなり入れるかもしれない。
ある意味ストーカー的な妄想恋愛に邁進する主人公・爽太を嵐の松本潤がどう体現するのか。『リッチマン~』では子犬のような愛らしさ全開だった石原さとみが爽太を思わせぶりに振り回す「性格悪子ちゃん」のサエコをどうリアルに演じるのか。20代男子の4割が恋愛経験ナシといわれる現代において、あからさまにベタな恋愛ドラマをつくるとは思えず、かなりヒネリや毒のある展開になるものと思われる。
原作では爽太のセフレとして描かれる加藤えれな役が水原希子というのもグッとくるし、爽太の妹・まつり役に有村架純が配されているあたりも抜かりがない。
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公式HPより
『明日、ママがいない』 日本テレビ 1/15スタート 水曜22:00~
日テレ水曜10時といえば、芦田愛菜が注目されるきっかけとなった『Mother』や満島ひかりがシングルマザーを演じた『Woman』(いずれも脚本は坂元裕二)など、母と子の葛藤の物語に象徴されるヘビーながらも見応えのあるドラマを放映してきた枠だ。この枠に、ふたたび芦田愛菜が降臨。そして、大河ドラマ『八重の桜』のチビ八重で人気を集め、『Woman』では満島ひかりの娘を演じた鈴木梨央も加わり、何やらまたしても見る者の涙を枯らそうという魂胆らしい。
親の虐待などによって児童養護施設に預けられた子どもたちがサヴァイヴしていく話と知り、安達祐実の『家なき子』リターンズか!? と思ったのだが、予告動画を見たら、「親なき子たちの物語」というフレーズを使っていて納得。施設の子どもたちが「ポスト」だの「ボンビ」だのとあだ名で呼び合うのは、親からもらったものは名前も含めてすべて捨てるためだというからすさまじい。
「親に虐待されてかわいそう」なんていう良識ある視聴者のうわべだけの感傷を吹っ飛ばし、捨てられたほうだって黙っちゃいないぜ、というタフな生き方を見せてもらいたい。はたして「同情するなら金をくれ」に匹敵するキラーフレーズは出るのだろうか。
今のところ公式サイトに脚本家のクレジットはない。普通に考えれば『Mother』『Woman』の坂元裕二なのだろうが、どうやら新海誠のアニメーションの脚本に参加している松田沙也の線が濃厚。未知数のひとだけに期待と不安が入り混じった状態で放映を待つしかなさそうだ。
他には、TBS深夜の「ドラマNEO」枠で放映される『ダークシステム 恋の王座決定戦』(TBS 1/20スタート 月曜24:28~)も、まさにダークホースとして押さえておきたい。何しろ、自主映画でありながら異例の高評価を得た幸修司の映画『ダークシステム』に惚れ込んだ映画監督の犬童一心(『ジョゼと虎と魚たち』『のぼうの城』)が演出を買って出たというのだ。
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公式HPより
好きな女の子を恋敵に奪われた男が手づくりマシンを駆使して反撃に出る...という恋愛バトルコメディだが、『失恋ショコラティエ』がフランスで修行してショコラティエになってあのコを見返してやるんだ!というシャレオツなリベンジであるのに対し、『ダークシステム』の主人公・加賀美はあくまで負のエネルギーをマシンに搭載してライバルに暑苦しく立ち向かう。
加賀美を演じるのは、これがドラマ単独初主演のHey! Say! JUMP・八乙女光。自分勝手で小心者というイケてない主人公をどう演じるのか見ものだが、加賀美が惚れ込むヒロイン・白石ユリを昨年のミスiDグランプリに輝いた玉城ティナが演じるのも大注目。すでにモデルとして各方面から引っ張りだこだが、ファムファタル(運命の女)と言うべき役柄をドラマ初出演の玉城がどう魅せるのか。低予算の自主映画だからこそ生まれる馬鹿馬鹿しい情熱のようなものが映画版の魅力だったが、ドラマ版にもその熱量が受け継がれていることを期待したい。
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公式HPより
他にも、瀬戸康史主演、石橋杏奈、小島藤子、三吉彩花など注目の若手女優が揃い、1日1話、10日間を10話で描くというミステリー『ロストデイズ』(フジテレビ 1/11スタート 土曜23:10~)あたりも初回は押さえておきたい。角田光代の小説のドラマ化で原田知世が主演を務める『紙の月』(NHK 1/7スタート 火曜22時~)も、全5話と短いが、巨額横領して男に貢ぐ女を原田知世がどう演じるのか興味をそそられる。
ということで、1月スタートのドラマをピックアップしてみたが、岩井俊二、長澤雅彦、犬童一心と、複数の映画監督が連続ドラマに進出しているのも今期の特徴のひとつ。ドラマ好きの間ではここしばらく「脚本家は誰か」でドラマを見る傾向があったが、それに加えて今度は「演出は誰か」に注目が集まるとすれば、さらに見方は多角的になる。
『医龍4』がないじゃないか!とか、向井理と綾野剛という当代人気イケメン共演の『S 最後の警官』はどうした!とか、各所からツッコミが聞こえてくるが、まあ気のせいだろう。人気シリーズや人気俳優のドラマは放っておいても見るひとは見るでしょ。というのがこのコーナーのスタンスだ。
次回は、新ドラマの初回が出そろったタイミングで更新する予定なので、ぜひそれまでにおのおの課題(?)をクリアしておいてほしい。
では、いいドラマを。
BACK NUMBER
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続・今月の顔。vol.9 タレント 優香

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マルチタレントとして、バラエティ、ドラマ、コントなど幅広い分野で活躍する優香ですが、近年は女優として話題作への出演も目立ちます。2014年の幕開け早々に公開される話題作、『黒執事』では、これまでのパブリックイメージとは全く異なる新機軸の演技を披露し、新たな側面をアピールしました。芸歴15年を超えた、いまの優香が何を思うのか。たっぷり語っていただきました。

Photo_Hironobu Sato
Styling_Ai Uga
Hair&Make-Up_ Izumi Okada[KiKi inc.]
Edit_Ryo Komuta

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映画『KILLERS/キラーズ』公開記念インタビュー 高梨臨。猟奇的な現場を終えて。

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日本とインドネシアの映画人が手を組んだ、注目の劇毒エンターテインメントムービー『KILLERS/キラーズ』。欲望の赴くままに殺人を繰り返す野村(北村一輝)。そんなシリアルキラーである野村の心を惑わす久恵を演じるのが、国際派女優として活躍する高梨臨である。アイドルから女優へと転身し、近年は国際的にも高い評価を獲得している彼女は、なぜ"快楽殺人"という仰々しいテーマの作品に出演したのか。そしてバイオレンスムード立ちこめる作品の裏側とは。高梨臨が語ります。

Styling_Yuta Kaji
Photo, Edit_Yuji Nakata

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cf_killers_takanashi_sub1.jpg 『KILLERS/キラーズ』  
キャスト:北村一輝、オカ・アンタラ、高梨臨 、ルナ・マヤ、黒川芽以、でんでん、レイ・サヘタピー
製作総指揮:ギャレス ・エバンス
脚本:ティモ・ジャヤント、牛山拓二
監督:モー・ブラザーズ
製作:日活、ゲリラメラフィルムズ 
協力:ポイント・セット 
配給:日活  (C) 2013 NIKKATSU/Guerilla Merah Films
公開:2014年2月1日(土) 

2013年製作/カラー/HD/シネスコ/5.1ch/日本・インドネシア/138分/原題『KILLERS』/【R-18+ 】【 サンダンス映画祭2014 正式出品 】

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SILENT POETS×toe 互いの音像に惹かれ合う、 オルタナティブミュージシャンの邂逅。

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陰影のある究極に美しいダブの音像を創り出す"静寂なる詩人"、SILENT POETS。長い沈黙を破り、昨年自身のレーベルを立ち上げてついに8年ぶりの再始動を果たした。ファンからの「待ってました!」の声に応えてくれるかのような、待望のライブセッションイベントが2月7日(金)に開催される。SILENT POETSの下田法晴がリスペクトするインストゥルメンタルバンド toeを迎えた「ANOTHER TRIP SESSION vol.1」に出演する、toeのギタリストでありフロントマンの山嵜廣和とともに、イベントや互いの音楽、2014年の活動について深く語りあってもらった。

Photo_Go Tanabe

Interview&Text _Seika Yajima

Edit_Ryo Komuta

SILENT POETS
1992 年デビュー以来、DUBを基調にした独自のサウンドで、通算7枚のオリジナル・アルバムをリリース。ヨーロッパを中心に40枚以上のコンピレーションに楽曲が収録されている。昨年、下田法晴自身のレーベル「ANOTHERTRIP」を設立。8年ぶりの再始動として、New DUBアルバム「ANOTHER TRIP from SUN」、また 前作「SUN」Newエディション「SUN -alternative mix edition」がリリースされたばかり。


toe
Yamazaki Hirokazu(G)、Mino Takaaki(G)、Yamane Satoshi(B)、 Kashikura Takashi(Dr)の4人で2000年に結成されたインストを中心としたバンド。エモーショナルかつアブストラクトな楽曲は日本のみならず、世界中で支持されている。世界8カ国での熱狂のライブアクトが話題となった、ヨーロッパツアーのライブ映像が収録された「8 days dvd -toe EU tour2012- toe」も好評発売中。

寡黙な佇まいから熱いものがにじみ出てくる感じがたまらない(下田)

-今回の「ANOTHER TRIP SESSION vol.1」で、お二人が一緒にライブを行うことになったきっかけについて教えてください。

下田法晴氏(以下下田/敬称略): このイベントは僕のレーベル「ANOTHER TRIP」の企画なんですが、第1回目は誰にお願いしようって考えたときに、やっぱり僕が一番かっこいいと思う、素敵なバンドにお願いしたいと思ったんです。それで、僕から山㟢くんにライブ出演をオファーしてみたんです。

山㟢廣和氏(以下山㟢/敬称略): 嬉しい限りです(笑)。

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下田: 僕よりも下の世代のバンドの中でも格別にかっこいいなと思うし、toeのライブDVDをよく観ているんですけれど、寡黙な佇まいから熱いものがにじみ出てくる感じがたまらないんです。観ていると切なくなるというか。心地よい切なさなんですけれど。すごく胸に熱いものがガーッと込み上げてくるんです。そういう音楽が僕は好きだし、自分もそんな音楽をやりたいなと常々思っています。

-toeの音楽のエモーショナルなところに、琴線が触れる感じでしょうか。

下田: そうですね。音楽的にも全く僕が想像もつかないことをやっていますし、単純にすごいなと思いますね。僕が8年間CDを出していなくて、ちょっと気持ち的に閉じているときにCDをもらったりしたんですが、どれだけかっこいい音楽をやっているのかと思うと、聴くのが怖かったりしました。正直、聴きたいけれど聴きたくないという時期がありましたね。だけど、今はよく聴いています。今日もヨーロッパツアーのDVDを観てきましたけど、やっぱりいいなと思って。僕はライブもほとんどやったことがないので、僕から見るとtoeは本当にとんでもない人たちです(笑)。だから、今回ライブを一緒にやるのは胸を借りるような心境ですね。

山㟢: そんな風に言ってもらえてすごく嬉しいですね。音楽性は違うけれども、僕が目指していることや最終地点は、SILENT POETSとどこか似ているような気がしています。SILENT POETSはダブとかレゲエのリズムを踏襲した音楽が多いと思うんですけれど、僕が好きなMOGWAIとかストリングスが入っている長回しのバンドと共通しているようなところがあると思うんです。お互いなんとなく、好きな音楽の方向性やメロディ、雰囲気が似ているのかもしれません。

下田: そうですね。でも、一緒に飲んでいるときでも、お互いの音楽についてこんなに話をしたことないですね。どんなところが好きなのかは、本人を目の前にすると言いづらいので(笑)。

-SILENT POETSとtoeの共通しているところは、音楽のなかに存在する静けさやその中にある"熱"のようなものだと思うのですが、お二人は音楽を作る上でのインスピレーションはどんな風に湧き上がってくるのでしょうか?

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下田: 僕は作ろうと思ったときにしか音楽を作らないタイプ。「あ、そろそろやんなきゃ」みたいな感じで(笑)。いざ、作ろうと動き始めたときに、自分の頭の中に知らず知らずのうちに溜まっているものを出してくるみたいなところはありますね。映画を観てよかったものとか、どこかに行って感動したこととか、もちろん音楽を聴いて良かったなって思う体験の蓄積が自然に出てくるとは思いますね。

山㟢: 頭のなかのストックを出してくるような感じですね。僕もたぶんそんな感じです。僕の場合は、最初にリフだけ考えるんですよ。ふと思いついたリフのフレーズをiPhoneに肉声で録音したり、たまにギターを弾いてていいなと思ったフレーズを10秒くらい録音しているんです。いざ、曲を作るってときに、そこから引っぱり出してきますね。作りたい曲がイメージできたときにこの前録ったこれ使えるかな、あれ使えるかな!?って試行錯誤しながら、コラージュっぽく使う感じですね。リフからの流れで曲をそのまま作らないで、あとからそのリフのフレーズをパズルのピースのような感じにして作りますね。たぶん、下田さんもそういうことを頭のなかでやっているんじゃないかなって思います。

下田: 僕も最初に全体を作ろうとするよりも、パーツを作って、組み合わせていく感じ。toeを聴いているとそういう作り方をしている感じはすごくわかりますね。例えばですが、切れ端があったらここに何をくっつけようかなって考え出していくような感じ。具体的に曲の全体をイメージしていくときもたまにあるけれど、山㟢くんと同じようにコラージュとか、デザインをするような発想に近いですね。僕は楽器もほとんど弾けないから、サンプリングで作るのもデザイン的なセンスに近いですね。

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山㟢: お互い、音楽とは別にデザインの仕事をしているから思考回路が近いのかもしれませんね。わりと「これとこれくっつけたらどうかな?」「これとこれ合うかな? 最終的に」って、いろいろ試しながら作業していく感じが。

下田: 本当にそんな感じですね。その結果、本当に1個のフレーズだけが最終的に残ったりすることもあります。その残ったものからまた生み出す作業が始まりますね。

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-SILENT POETSの音楽で多用されているストリングスは、情緒的で非常に印象的ですが、どのように作っていらっしゃるのでしょうか?

下田: ストリングスにしても同じような流れで作っていますね。ひとつのフレーズだけ先にあって、それをループして作ってみたり、アレンジしたりして最後に展開を作っていく感じです。映画音楽とかのストリングスで心を持っていかれたりする感じ、ああいう世界がやっぱり自分は好きなんです。そういう音楽を単純にやってみたいなっていうのがあったし、バイオリンとか弦の音って心にくるじゃないですか。だから、やっぱり使いたくなっちゃいますよね。でもだからといって、クラシックがそんなに好きなわけではないし、それをそのままやろうとは思わないんですよね。全然詳しくないし。

山㟢: そこがSILENT POETSのすごいかっこいいところなんですよね。例えば、ジャズのすごいかっこいい曲をサンプリングした有名な曲があるとして、それを聴くとジャズとかそんなに詳しくないから、「長っ!」って、ちょっと退屈に感じるんですよ。なんだよ、かっこいいとこちょっとしか出てこないじゃないか! みたいな(笑)。

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下田: そういうの、あるよね。

山㟢: ヒップホップのように、サンプリングして曲を作る手法がかっこいい音楽として認識されたぐらいから音楽を聴いている僕としては、ストリングスを使った原曲を聴いたら、「いい曲だけど、長いな。あんまりノレないな」って思うんです。でも、SILENT POETSはそこにちゃんとかっこいいリズムを入れてくる。楽器が上手くて、アカデミックな音楽の勉強をした人にはできないだろうし、そういうことをしていない下田さんがかっこいいことをしているということ自体が、超かっこいいと思うんです。バンドとかもそうなんですけれども、楽器できないヤツがなんかすごいかっこいいことをしているみたいなエネルギーにグッとくるところがあるんです。SILENT POETSにもそういうところがあると思いますし、やっぱりそこが素晴らしいなと思います。

下田: 僕がダブにこだわっているのも、完成された曲にエフェクトをかけたりして、いかに違う曲にできるのか実験する面白さがあるからなんですよね。ストリングスも最初はサンプリングでワンフレーズをループして使っていましたけれど、それを生のオーケストラでやってみたいという願望がだんだんと出てきて。今はけっこう多用してますけれど、それがこれからはどうなっていくかは未知数です。

-toeはどんな風に音作りされていらっしゃるのでしょうか?

山㟢: うちのバンドはインストバンドなんで、ジャムセッション的なバンドと対バン、みたいなことがよくあったんですけど。「なんかみんなでやろうぜ!」って言っても、みんなセッションできない感じなんですよね(笑)。あと、自分はパンクロック的なものが好きで音楽をやり始めて、いわゆる3コードの衝動だけでできた曲に、すごい憧れがあるし、その強さは知っているんだけれども、自分にはそれができないって知っているから、衝動だけでできた曲が嫌なんです。どちらかというと、計算されて作曲された楽曲をガッてやるほうが、やりたいことに近いんです

下田: そうだよね。僕も完全に仕込まないと動けない。なんか即興でやってと言われても何もできないから。準備していかないと。

山㟢: 本当、そうなんですよね。たまにセッションみたいなことを頼まれてギターだけで何かやって欲しいと言われて「いや、できないですよ」と言ったけど、乗せられて1回だけ調子に乗ってやったことがあるんですよ。そしたら本当にできないから、お客さんの顔がみるみる曇っていくんですよね(笑)。だから、あんまり悲しい想いをお客さんにさせると困るなって思うんです。

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下田: 僕も前に同じようなことを頼んじゃったことがあったよね。

山㟢: だから前、練習しましょうよ、って言ったでしょ(笑)。

下田: そういうことだったのか、って今の話でよくわかった(笑)。

山㟢: 練習してたらできるので(笑)。

下田: 今回のイベントはイベント名に"セッション"と銘打っているから、なんか一緒にやるっていう感じに誤解を生んでいるかもしれないですが、今回はそういうことはないです。いつかちゃんと準備してセッションもできたらいいなと思いますけれど。

山㟢: 一緒にやるのはちゃんと練習して、もうちょっと小さい箱でふたりでやりたいですね(笑)。

-今回のイベントの全体的なイメージはどのような感じでしょうか。

下田: 「SILENT POETSを知らない」「toeを知らない」っていう人たちが混ざり合って、いろんな世代やジャンルの人が集まる楽しい場所になることをイメージして、「ANOTHER TRIP SESSION」というコンセプトにした感じです。いろんな意味でのセッションになればいいなと思って。

山㟢: だから、出演するDJ陣は僕たちふたりでお願いしたい人を5人づつ挙げて決めました。

下田: これだけいろんなジャンルの人がいたら、その周辺の方にも来てもらえそうかなと思って。最近こういったイベントが少ない気がするし、ロングタイムでお酒を飲みながらリラックスして音楽を楽しんでもらいたいなと思っているんです。

-とても楽しみですね。最後に、今年の活動として意識的にやっていきたいことについて教えてください。

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山㟢: 今年はアルバムを録ろうと思っています。そんなことを言い続けて、早3~4年経っているんですけれども(笑)。お正月にビートルズの『ザ・ビートルズ・アンソロジー』というDVDを買って、観ていたんです。僕はそんなにビートルズを一生懸命聴いていたわけではないんですけれど、ジョージ・ハリスンがよく使う音色があって、その音がいいなって、今思っていて。今日、友達にその音の出し方を教えてもらったんです。なので、その音を出せるエフェクターを買って、いろいろ試してみたいですね。

下田: その音を使ったアルバムが出るかもしれないということですね。僕も今年はアルバムが出るかもしれないっていうか、もう出さないと......。去年、NewDubアルバムと前作『SUN』のリマスター編集盤を出してスイッチが入っているから、この勢いで作りたいと思います。できたら、山㟢くんにもちょっと手伝ってもらいたいなと。

山㟢: でも、俺時間かかりますよ(笑)。

下田: (笑)。山㟢くんがよければぜひ、やってみたいです。作品は年内に出せるかわからないですけれど、頑張って作ります! 今回のイベントも評判が良かったら、続けてやっていきたいですね。DJも精力的にやっていきたいと思ってます。やるからには普通にやるのではなく、その一晩でいちばんかっこいいDJを目指してやりたいって、柄にもないことを思ったりしているので(笑)。

山㟢: ずっと待っていたんで、本当に楽しみにしています!

ANOTHER TRIP SESSION vol.1
Live:Silent Poets、toe
DJ:check this site
日程:2014年2月7日(金)
会場:LIQUIDROOM/LIQUID LOFT
開場:lounge open 20:00 
料金:3,000円

チケット購入先
PIA[P-code 220-938]、LAWSON[L-code 76888]、e+、DISK UNION(渋谷クラブミュージックショップ/新宿クラブミュージックショップ/下北沢クラブミュージックショップ/吉祥寺店/町田店)、LIQUIDROOM

LIQUIDROOM
電話:03-5464-0800
www.liquidroom.net
※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。

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KZA × Daniele Baldelli "ディスコ"にまつわる語らい。

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Force Of Natureとしても知られるKZAが昨年12月にセカンドアルバムとなる「Dig & Edit2」をリリース。それを記念して伝説のクラブ「cosmic」の創始者ダニエル・バルデリとの貴重な対談をお届けしたい。約4年振りとなったアルバムリリースにまつわるエピソードや伝説とまで謳われるクラブ「cosmic」の魅力まで、"ディスコ"という共通ワードから語られる40年の歴史と現在。フイナムだけのスペシャルロング対談!

Photo_Satomi Yamamauchi
Text_Kana Miyazawa
Translate:Ryo Takahashi
Edit_Hiroshi Yamamoto

DANIELE BALDELLI
"cosmic"の創始者。イタリアのラリー・レヴァンとも評され、イタリアンの伝説的クラブ"baia degli angeli"や"cosmic"のレジデント。当時のクラッシックスをコンパイル/ミックスした「cosmic the original」でコズミック再評価が高まり、Force Of Nature等のアーティストにも多大な影響を与える。45rpmの曲を33rpmでプレイするなど独自のスタイルを持つ。絶妙なタイミングと各曲のピッチを記憶しているかの如く正確無比なミックススキルで数多くのDJに影響を与え続けて来たまさにDJのオリジネーター。

Kza (Force Of Nature)
サンプリング/ヴァイナル文化への強い愛情を胸に、ダンス・ミュージックを独自のスタンスで追求し続けるDJ/プロデューサー。2009年、KZA名義初のファースト・アルバム『D.A.E.』をMule Musiqのサブ・レーベルEndless Flightからリリース。2014年最新アルバム『D.A.E. 2』をリリース。

僕にとってのバルデリさんは"先生"です。

-まず、KZAさんへの質問ですが、昨年12月にリリースされたセカンドアルバム「Dig&Edit 2」についてお聞かせ下さい。アルバムをリリースするのは前作から約4年振りとのことですが、リリースに至った経緯を教えて下さい。

KZA(以下、K): ずっとアルバムを出したいという考えがあったので、そのための素材を毎日作っていたんですよ。それが集まったタイミングが今回のリリースのタイミングになったんです。その間ツアーだったり、DJのスケジュールがかなり忙しかったので、制作に当てられる時間が少なくて、前作から4年も掛かってしまったんですが...。

-メロウでスローなオープニングから始まって、徐々にアッパーでハッピーなディスコらしい展開になっていきます。まるで1枚のロングミックスを聴いてるかのようなイメージ。KZAさん自身では、特に意識された点はありますか?

K: アルバムを制作する上で、"ループ感を出したい"というのが基本的な考えとしてありました。そのベースになり得るネタを見つけながら、制作していったので、全体的に終わりを感じさせない仕上がりになっているのかもしれません。

-なるほど。そのループ感への意識が、ジャンルを超越したなかでの自然な流れに繋がっているわけですね。バルデリさんはこのアルバムを聴いていかがでしたか?

B: もちろん好きなトラックもあったし、正直好きじゃないトラックもあったよ。僕は自分のトラックでさえ好きじゃないものがあるからね。だから今回はKZAのトラックをさらに好きになるためにリミックスをさせてもらったんだ。

-ちなみにバルデリさんが嫌いなトラックと、その理由を教えてもらっても良いですか?

B: うーん、特に嫌いな理由っていうのはないんだけど、最初に聴いた印象で"これは好き""これは好きじゃない"ってフィーリングで思うんだ。でもKZAの音楽はこれからもずっと聴き続けるから安心して!(笑) それに、最初に好きじゃないと思っていたトラックも、時間が経つにつれて好きになることもある。4、5年後に聴いたら"あ、いいね!"って思うこともよくある。だから、世に送りだしたトラックで無駄なものはないんだよ。

-バルデリさんは今回で二度目の来日となりますが、日本の印象を教えていただけますか? 大反響で終えた初ギグには、"Cosmic"(*下記参照)を知らない世代も多かったと思いますが?

(*cosmicとはバルデリがレジデントを務めた1979年から1984年にかけてイタリアに実在した伝説のクラブ。バルデリは当時のオリジナルスタイルが評価され、「コズミックの創始者」と呼ばれるようになる。)

B: まず、日本の方々の音楽に対する姿勢が素晴らしいと思ったよ! 若い人たちがフュージョンやジャズを知っていたからね。ヨーロッパでは年配の人たちが聴く音楽とされてるから若い世代に浸透していることに驚きました。"Sugar Free"(*70年代Fusion Jazz、Hank Crawfordによるもの)とか絶対知らないだろう?! と思って実験的にかけたら、"おお〜!"って歓声が沸き上がった時には本当にビックリしたよ。

そういえば1975年か76年ぐらいだったかな? イタリアのリミニって街があるんだけど、そこに当時のプログレッシブロックバンドのレコードを探しに来ている日本人がいて。そこまでする追求力がすごいなって思ったよ。

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-確かに日本人には1つのことを熱心に追う性質があると思います。日本の街についてはどうですか?

B: まるで映画の中の世界だよね。街がキレイで車はピカピカに磨かれてるし、ヨーロッパでは考えられない。とても現実離れしているような感覚になったよ。

それに日本人の礼儀正しさはすごいね。1日何回頭を下げて挨拶するの?! ってぐらいお辞儀をしている。(お辞儀のジェスチャーをしながら)"あ、どうも。どうも"って(笑)イタリアに帰ってから、友達に"日本でお辞儀をし過ぎて腰を痛めたよ!"って言うぐらい僕もお辞儀をしたからね(笑)

-あれは日本人特有のスタイルですからね。外国人からしたら確かに不思議な光景に映るかもしれません。KZAさんがバルデリさんと会ったのはその初来日の時が最初ですか?

K: そうですね。Dommuneの時が初対面だったんですけど、素直に嬉しかったです。僕はバルデリさんのファンですからね。緊張して最初に何を話したか覚えてないんですけど、お酒の力を借りてどうにかコミュニケーション取ってました(笑) それに、DJ中にブース横でプレイしている手元を見せてもらったり、貴重な経験をさせてもらいました。

-憧れの方を目の前に、しかもそこまで接近できるのは夢のようですね。バルデリさんはKZAさんにとってどんな存在と言えるのでしょう?

K: どんな存在?? そう聞かれたら、僕にとってのバルデリさんは、"先生"ですよね。一番最初に聴いたミックスが多分80年代にクラブで録ったものだと思うんですけど、知らない曲ばかりで衝撃を受けました。それからヤバイ! と思ってものすごく勉強したし、そのミックスを聴いてなかったら手を出さなかったジャンルとかレーベルもたくさんあります。ある意味今の僕の音楽の多様性を作ってくれた人だと言えます。

-お2人にお聞きしますが、テクノでは数年前からインダストリアルテクノの再来と言われ、ディスコではNu-Discoのような現代要素を取り入れたニュージャンルが浸透し、人気を得ています。新たなディスコブームが来ていると感じていますが、そういった現象についてどう思いますか?

B: 10年毎に音楽の流れは変わっていると思うんだ。名前を変えたり、形を変えたりして、10年くくりで戻ってきている。だから、僕はNu-discoに対して特に抵抗はないし、新しいスタイルを貪欲に取り入れているよ。若い世代の感覚を取り入れてリエディットを作ったり、参考にしたりもしてる。僕は44年間DJを続けているけど、その中で新しいものを吸収していくことはとても大切なことだと思っているんだ。

K: 僕自身はそこまでディスコブームというのは感じてないですね。まず日本で1ナイトのパーティーでディスコオンリーっていうのはあまりないし。でも、最近、海外アーティストの来日は多いなと思っています。特にIDJUT BOYSや(TODD TERJE、RUB N TUG周辺)とか、すごい注目されてますよね。

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cosmicは自分を自由自在に表現することが許される唯一の場所だった

-バルデリさんは他のアーティストにはない独創的な選曲をされていると思うのですが、やはりそれは昔の曲から選ぶことが多いのですか? 70年代後半にいわゆるマニアック盤と言われるようなレコードを入手するのは難しかったのではないでしょうか?

B: 昔はとにかくレコードを大量に買ってたんだ。だから今で言うアンダーグラウンド盤と呼ばれるものも必然的に手に入れていたことになるし、かける機会も多い。リリースも多い時代だったから特に手に入れるのが難しかったということはないよ。DISCOPIUというレコードショップに夜通し通って、時間がある時は100枚聴いて99枚買うこともあるぐらいだった。とにかくお金を全てレコードにかけていた時代だね。でも今は100枚聴いて2枚ぐらいしか買わなくなってしまったよ。

昔はレコードを作ってる人は全員アーティストだったんだ。ちゃんとしたミュージシャンだった。今は機械で制作したDJ向けの曲が多くて、極端な話をすれば1万枚聴いて100枚良ければ良いという時代になってしまったね。

-そういった傾向があるから再プレスされていないマニアック盤はどんどん価値も値段も上がっていくんでしょうね。その中でもよくかけている曲、注目しているアーティストがいたら教えて下さい。

B: 難しい質問だなあ(笑) 僕が"このアーティストが良いよ!"って言ってしまうと反感を買ってしまう恐れがあるからね(笑)

-では、あとでこっそり教えて下さい(笑) KZAさんはいかがですか?

K: 僕はさっきも名前が上がったIDJUTとかRUB N TUG、Eddie Cも。あと、バルデリさんも参加しているディスコのリミックス集とかはかけることが多いですね。

-KZAさんは"ヴァイナルディガー"と呼ばれていますが、今後のヴァイナルシーンについてどういった考えを持っているか教えて下さい。

K: 爆発的に流行ることはないと思うんですけど、マニアックなところでずっと需要があり続けるんじゃないですかね? 僕はCDでプレイすることも多いけど、レコードでリリースされてるものはレコードで欲しいんですよね。データでしか出回ってないものとかを早くレコードで欲しいなって思いますし。要はコレクターなんですよ、僕は。物質としてあることに満足するタイプ(笑)

-バルデリさんはイタリアが活動拠点の中心だと思いますが、イタリア、もしくはヨーロッパでの状況はどうですか?

B: 最近はCDの方がいいよね?(笑) 僕はもう歳だし、世界中を回るからレコードでは重いからね(笑)
あとは、レコードの売れ方が変わってきていると思う。昔はイタリアだけで1000枚売れていたけど、今はインターネットの普及で、イタリアでの売れ行きは少し下がったんだ。でもヨーロッパ全体を見るとあまり変わっていなかったり。まあ、これからもがんばって売っていくよ!(笑)

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-いろんなところで聞かれているかと思いますが、伝説のクラブ"cosmic"とはどんなところですか? 宇宙船のようなブースがあると聞いていますが、具体的に教えて下さい。

B: お酒を提供する場所ではなかったし、席もなかった。天井からたくさんのライトが吊るされていて当時にしてはとても豪華な内装だったね。Cosmicでプレイしていた79年から84年にかけては自分にとって、とても実験的な時代だったんだ。自分でも何をやっているのか、何をやればいいのか分からなかった。でも後になって評価されたのはその時にやっていたことだったから結果的には間違ってなかったんだって思ってるよ。具体的にどんなことをやっていたかと言えば、例えば、テクノのトラックはBPMが早過ぎるからわざと回転数を変えてかけたりしてたんだ。自分が感じるままに可能性のあるものを無我夢中でやっていただけなんだけど。

Cosmicの前に同じイタリアにある"baia degli angeli"でプレイしていたけど、今と同じようにフロアーの雰囲気を考えながらプレイしないといけなかった。でもcosmicは自分だけのやり方で自分を自由自在に表現することが許される唯一の場所だったんだ。"オレのプレイが気に入らなければ帰れ!"と言えたからね(笑)

-オーディエンスがDJに向かって"もっと上げろ!"とか"あの曲をやれ!"とか野次を飛ばす話はよく聞きますが、その逆パターンが可能だったわけですね(笑) 改めてcosmic時代のバルデリさんの存在の大きさを思い知らされるエピソードです。ちなみにお二人にとって印象的だったクラブはありますか? 国内外含めて教えて下さい。

B: もちろんcosmicだよ!(笑)

-愚問でした(笑) KZAさんはどちらですか?

K: 僕はYellow(*Space lab Yellow西麻布にあった伝説的なクラブ。elevenの前衛。現在はどちらもクローズ)ですかね。

-確かにYellowは本当に素晴らしいクラブでした。バルデリさん、KZAさん、今後の活躍も期待しています! 貴重な時間をありがとうございました!

cf_kza_x_daniele_sub7.jpg KZA 「D.A.E.2」
endless flight
¥2,415 発売中

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WHO ARE YOU? 謎に満ちた詩人・菅原敏の正体。

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詩って何? 詩人って一体? フイナム読者にとってはあまり馴染みの無い「詩」。そんな詩の世界に身を置きながら、僕らが思い描く詩人とは異なる活動を続けている菅原敏。そんな彼が2014年の幕開けから取り組んでいるのが、毎夜YouTubeに投稿されている「詩人天気予報」です。詩と天気予報、思わぬ組み合わせは如何にして誕生したのか。そしてその意図とは。菅原敏自ら語っていただきました。

Photo_Satomi Yamauchi
Text_Go Suzuki
Edit_Hiroshi Yamamoto

菅原敏(すがわらびん)
詩人。2011年に詩集『裸でベランダ/ウサギ と女たち』をアメリカの出版社PRE/POSTよりリリースBEAMSやスターバックスコーヒーなど異業種とのコラボレーションから、ラジオ・テレビでの朗読、雑誌や新聞への寄稿、講演、ナレーションまで、その活躍の場を広げている。
sugawarabin.com
twitter.com/sugawara_bin

「詩人・菅原敏」とは一体何者なのか。

-菅原さんにこんなことを伺うのは失礼かもしれませんが、そもそも詩って何なのですか?

菅原: 簡単に言ってしまえば私的な言葉だと思います。作った本人が詩と決めれば、それは詩になる。僕自身、詩人として生きていくと決めたときから、詩人と名乗っているんです。俳句や短歌のように定型が無いので、定義が難しいんですよね。自由ゆえの奥深さは魅力ではあるんですが、明確な答えが無いからこそ伝えにくい部分もあります。

-一般的に詩に馴染みの薄い人の方が多いと思うんです。そういったなかで詩人・菅原敏の特徴を簡潔に教えてください。

菅原: 僕の場合は詩を書くだけではなく、自ら朗読するのが大きな特徴ですね。その他にもファッションブランドとコラボレーションしたり、ナレーションや講演、フイナムでは〈ナイキ スポーツウェア〉のアイテムに対して詩を綴ったり。より多くの人に詩を知ってもらうため、他業種と積極的に携わるようにしています。

-そんな菅原さんが影響を受けた詩人を教えてください。

菅原: 日本人だと金子光晴と山之口貘ですね。金子光晴は文壇の世界でも高い評価を得ている地位のある方なんですけど、詩の内容がとにかく破天荒で。一方の山之口貘は、沖縄出身でとにかく貧乏。だからこそ味わい深い詩を書くんです。ともに故人ではありますが、激烈な実体験から生まれてくる詩の数々は、時代を超越した魅力があります。正直、今読んでも胸が熱くなります。

-菅原さんはなんでまた詩人という特殊な職業を志したんですか?

菅原: もとを辿ると祖父の影響かもしれません。僕の祖父は営んでいた工場に人を集めて、詩の朗読会を開催していたんです。アメリカの詩人に手紙を出して、返事が来たことを自慢気に語っていたこともありました。若い頃には戦争に翻弄されて抑圧せざる得なかった文化的な欲求を、年を重ねてから発散していたんですよね。ようは変わり者です。そんな祖父を、幼少の頃の僕は冷めた目で見ていたんですけど...。

-詩の朗読会を冷めた目で見ていた少年が、なんで詩人になってしまったんでしょうか?

菅原: 学生時代から始めたジャズバンド活動がキッカケですね。音楽から歌詞に興味を持って、その意味を紐解いていくとビートジェネレーションに辿り着いて。彼らがまた格好良いんですよ。言葉のチョイスもスタイルも。サルトルの実存主義へのオマージュとして、黒のタートルネックを着ていたり。インテリジェンスがあるんだけど不良。ぼくにとってロックスターのような存在が詩人だったんです。

-とはいえ、普通は自ら詩を書こうとはなかなか思わないですよね。

菅原: バンド時代に作詞・作曲を手がけていたので、その延長で詩は書いていました。試しにライブの合間に詩を読んでみたら、演奏するよりもウケが良くて。ジャズのライブなのに笑いが起きたんですよ(笑)

-お客さんの「笑い」から詩に目覚めたわけですね。

菅原: ジャズのライブって笑いが起きるような状況では無いですからね。演奏ではリアクションが少ないのに、詩を読むと様々な反応が出てくる。そのギャップが堪らなく面白かったんです。

-それで徐々に詩への比重が大きくなってきたわけですね。実際に詩人として活動する以前は何をされていたんですか?

菅原: 新卒で広告代理店に入社して、その後はフリーのコピーライター、何もしない1年を過ごしたりしながらも、、2008年頃からはヤフージャパンに勤めていました。その間、詩人としての活動は続けていましたが、実際に腹を決めて独立したのは一昨年なんです。

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菅原敏が「詩人・菅原敏」になった経緯。

-つまり、詩集「裸でベランダ/ウサギと女たち」を出版した2011年はヤフージャパンのスタッフだったわけですね。

菅原: そうです(笑)。徐々に詩人としての仕事も増えてきて、どこかで区切りを付けないといけないなと常に思っていて。一念発起して、詩人として独立したんです。

-独立の決め手といえる詩集「裸でベランダ/ウサギと女たち」の、発売までの経緯を教えていただけますか。

菅原: バンド仲間だった友人が、日米を股に掛けたパブリッシャーとして活躍していて。彼が僕に声を掛けてくれたんです。「朗読してきた詩を書籍としてまとめてみないか?」と。

-実際に自著を発売して、反響はいかがでしたか?

菅原: 本って出しただけじゃ売れないんですよ、しかも版元はアメリカ。だから、最初は反響なんて皆無。反響を得るためには自分で動くしかありませんでした。あらゆるツテを利用して、たくさんの方にお会いして、本を手渡して、読んでもらう。簡単に言えば営業ですよ。そこでユトレヒトの江口さんが面白がってくれて。ラジオで"今年1番キザな書籍"として「裸でベランダ/ウサギと女たち」を取り上げてくれたんです。そこから徐々に反響を得られるようになって、仕事のオファーの幅も広がっていきました。

-まさに詩集が名刺代わりになったわけですね。仕事の1つとして朗読というのもあると思うのですが、詩人・菅原敏にとって朗読する意味は何なのでしょう?

菅原: 朗読こそ、僕の詩の醍醐味だと思っています。自分で摘むいだ言葉を、自分の声で、自分のテンポで、表情や仕草も交えて伝えられる。あくまでも詩集はガイドで、朗読を通してその都度、そのときの心情で詩がアップデートされていく。詩集は製本して完成ですけど、朗読には完成形が無いんです。読んでいる僕自身も、常に新しい発見がありますし。

-正直、詩の朗読会に対してとても地味な印象があります。アナウンサーの方がお堅い作品を感情的に読んでいるような。

菅原: 確かにそういったイメージは強いかもしれないですね。ただ、僕の場合は来てくれた方々に静かに聞いてもらうよりも、一緒に楽しんでもらいたい。そのためにバンド時代の経験を活かして、よりエンタテイメント性の高い朗読を心がけています。

次のページでは話題沸騰の「詩人天気予報」について語ります。

菅原敏はなぜ「詩を書く」のか。

-ちなみに菅原さんはどういったときに、どんな心情で詩を書いているんですか?

菅原: 僕にとって詩を書くことはとても自然な行為です。もちろん、ときには産みの苦しみを感じるときはあります。それでも、常にオープンな気持ちで、ナチュラルに言葉を吐き出しています。酒に飲まれて、シャワーを浴びてたら涙が止まらなくなって......、そんなときに産まれる詩もありますし、日々付けている日記を読み返したときに思い付く詩もある。僕自身、頭に思い描いた言葉を詩としてカタチにすることで、気持ちの整理をしているのかもしれません。

-実際、どのくらいのペースで書いているんですか?

菅原: まちまちです。まったく思い付かない日もあれば、湯水のように言葉がわき出ることもある。ただ、なんだかんだ言って締切があると、スイッチが入りますよね(笑)。しかも、今はYouTubeで「詩人天気予報」を配信しているので、ほぼ毎日迫られて詩を作っています(笑)

-「詩人天気予報」は最高に面白いコンテンツだと思います。知的でユーモアもあって、なおかつ人の役に立つ。ただ、なんでまた詩人が天気予報を読むことになったんですか?

菅原: ラジオ番組を持ちたい一心で始めました。そんな簡単には番組は持てないじゃないですか。だったらまず自分でできることからやってみよう、と。そこで思い付いたのが天気予報。天気は情報として役に立つし、詩の面白味や朗読のリズム感、僕なりのユーモアも動画であれば伝えることができる。だけど、実は今でも葛藤はあるんですよ。1人でライティングを調整しているときに「俺、何やってんだろう?」って(笑)。すでに40回近く更新してはいるんですけどね。

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「詩人天気予報」の意図とその先に見据えるもの。

-(笑)。もしかして1人でライティング、撮影、編集、詩の朗読までやっているんですか?

菅原: そうなんです。先ほどお話ししたパブリッシャーのクレイグに相談しながら、試行錯誤を経て、作りました。馴れない機材を扱うので最初の収録には8時間くらいかかってしまって。たかが1分の動画なんですけどね。

-詩人天気予報で菅原さんがこだわっている部分を教えてください。

菅原: やっぱり詩の内容、朗読にはこだわっています。その他にも作家ウィリアム・バロウズが得意とするカットアップという手法を現代的なテクノロジーを使って再現してみたり、ドナルド・フェイゲンのアルバム『Nightfly』にインスパイアされていたり。小さいこだわりを随所に鏤めています。

-1ヶ月近く経過して、どんなリアクションがあったのでしょう?

菅原: "継続は力なり"じゃないですけど、思いがけないオファーはいくつかありました。なかでも驚いたのが本物の気象予報士との対談のオファー。そもそも天気なんて題材に過ぎなかったんですけどね。ただ、気象予報士と詩人の対談って、それだけで面白そうじゃないですか。あとは日々、お会いする方に天気を訊かれる機会が増えましたね(笑)。

-詩人天気予報では新たな動きもあるようですが。

菅原:bayfm78 PROJECT ROOM」というプロジェクトの一環として、1ヶ月間の冠番組の獲得を目指してクラウドファウンディングを使って資金集めをしています。目標金額を達成すれば1ヶ月間、詩人天気予報をオンエアすることができるんです。

-夢の実現に近づいているわけですね。

菅原: そう簡単にはいかないですけどね。ようやく目標の半分に到達したあたりですし。まだまだ頑張らないといけないなと。

-それでこのインタビューも早めに公開を希望しているわけですね(笑)

菅原: そういうことです(笑)。このラジオ番組も、ファッション関係とのコラボレーションも、詩をもっと身近に感じてもらうひとつのきっかけになればと。もちろん自分が「ラジオで詩を読みまくりたい」という気持ちが一番ですけど(笑)。キザなピエロを演じつつも、より広く詩の楽しさを知ってもらえたら嬉しいですね。

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詩人天気予報
www.youtube.com/user/sugawarab?feature=watch

bayfm78 PROJECT ROOM
ラジオ業界初!? 詩人の冠番組を1ヶ月オンエア!菅原敏の「詩人天気予報」
greenfunding.jp/projectroom/projects/673

菅原敏(詩人)×山本志織(気象予報士)
『天気予報の作り方』 Presented by Pina Colada
日時: 2月27日(木) 開場:20:00/開演21:00
料金:2,500円/1drink
会場:BAR Pina Colada(ピナ・コラーダ)
住所:東京都目黒区上目黒1-5-10

※チケットのご予約が必要です
電話:03-3712-0203(Pina Colada/受付時間12:00〜22:00)

【菅原敏よりごあいさつ】
『詩人天気予報』が開始から一ヶ月を迎え、NHKの週末の顔として活躍されていた気象予報士の山本志織さんと対談イベントをいたします。気象予報士から見た「詩人天気予報」、それぞれの「天気予報」の裏側や撮影秘話、気象予報を始めたキッカケ、などなど、おそらく全く正反対のトークをお楽しみください。

※詳細は菅原敏Facebookページにて
www.facebook.com/Bin.Sugawara.Poet

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RÉMY:ÜSIC×HOUYHNHNM 音楽を軸とした、様々な文化で共鳴する 両者のコラボレーションの形を追う。

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コニャックの名門〈レミーマルタン(RÉMY MARTIN)〉が、ミュージックラバーに向けてスタートさせたプロジェクト「RÉMY:ÜSIC(レミュージック)」。音楽をベースにした様々なカルチャーを有機的に結びつけて、ミュージックシーンを盛り上げていく起爆剤のような存在である同プロジェクトを2014年のフイナムでは、何回かに分けて追いかけていきます。

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「RÉMY:ÜSIC」特集の第一回は、そもそも「RÉMY:ÜSIC」とは何ぞや? そして「レミーマルタン」とは?という根本となる部分に迫ります。過去に開催されてきたイベントの様子を振り返りつつ、「RÉMY:ÜSIC」側へのインタビューを軸に、本プロジェクトの概要を解き明かしていきます。

レミーマルタン×良質な音楽=RÉMY:ÜSIC。

-まず、「RÉMY:ÜSIC」の前に、現在のレミーマルタンの立ち位置について伺えますか?

1980年代バブル期に、優雅にブランデーグラスで飲む高級品というイメージが強かった「レミーマルタン」ですが、現在はお父さん、おじいちゃんが棚に大事にとっておいているお酒というイメージが強いのではないでしょうか。若い世代になると、「レミーマルタン」自体を知らないという状況でもあります。実際、ブランデーの消費というのは、90年、91年をピークにずっと落ちてきているんです。

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-正直、ブランデーとウイスキー、コニャックとスコッチの違いをきちんと説明できる人は少ないと思います。(違いについてはこちらを参照。)なぜそういった状況になっているのでしょうか?

バブル時代などよく飲まれていた時期も、「レミーマルタン」というのは、銀座や六本木などのクラブで飲まれるのがほとんどであり、ある種特殊な環境での需要だったんです。それがバブルがはじけて以降、上司に連れて行ってもらう"接待"という名の勉強の場が、会社の都合によりどうしても減ってきてしまった。そうして若い世代の人たちのブランデーやウイスキーについて学ぶ機会が失われていったのだと思います。

-そこで、なんとか新しいユーザー層に手に取ってもらえるようにしたい。

その通りです。その施策の一つとして、「音楽」を軸とした「RÉMY:ÜSIC」が生まれたんです。

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-具体的にはどんな活動をしてきたんですか?

2012年の6月に「ageHa」で行われたイベントを皮切りに、様々な試みに取り組んできました。「ageHa」ではレギュラーパーティである「COCOON HEROS TOKYO」や「CLASH」などで、レミーマルタンのブースを出してドリンクを紹介しました。また、購入した方を対象に抽選を実施、当選者をイラストレーターが"テクノヒーロー"として描くなど、ライブな仕掛けを打ちました。あとは月間音楽誌『NightOut』や、グローバルフリーマガジン『VICE』、そしてカルチャー誌『EYESCREAM』などなど、多くのメディアとタッグを組んできました。

-テクノを中心とした音楽でスタートしたのはどういった理由からですか?

レミーマルタンは決して安いお酒ではありません。百貨店などでは1本5,000円ぐらいで売っているようなお酒です。そういった中で、「良質な音楽」「良質なミュージックラバー」が集うパーティは何か?と考え、テクノミュージックを中心の活動として構築していきました。

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-確かに日本におけるテクノは、ストイックでピュアなイメージがあります。実際にパーティを行ってみていかがでしたか?

最初の「ageHa」でのイベントでのリアクションは「おっ、なんか新しいタバコのブランドですか?」といようなものでした。若者にとってはそれぐらいの認知なんだなという発見がありましたし、ここからきちんと伝えていかなくてはいけないな、と思いを新たにしました。ただ、その後、月1で同じパーティを開催し、色々な施策を打ち続けることで、リピーターも増えてきました。その後、「ageHa」から活動の場所を広げて、もっと広い人たちに認識してもらえるようにと、色々なイベントや、メディアとタッグを組み、様々なアプローチをしてきました。

-クラブシーンでのお酒といえば、近年はスミノフやレッドブルなどのイメージがありましたが、「RÉMY:ÜSIC」はそれよりも踏み込んだ展開をしているような印象です。

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その通りですね。ただ協賛しているだけではなく、一歩も二歩も踏み込んでの取り組みをしています。単純にお酒を提供するだけではなく、こだわった「音楽」と一緒にやっている、というのが重要なんです。「レミーマルタン」がこうした活動をしているということに対して、色々な方が興味を持ってくれているのを感じます。

-どんなイベント、メディアと組むようにしているのですか?

時代の流れを的確に見極めるというのはもちろん、フランスで作られているというお酒というのを意識して、なるべくヨーロッパのアーティストと絡むようにしています。あとは最先端の存在である、ということでしょうか。また、「レミーマルタン」というブランドを考えた時に、流行っている音楽と安易に組むのではなく、しっかりとした歴史や背景があるものと手を結ぶようにしています。

- RICARDO VILLALOBOS、ZIP、DJ Harvey、MAURO PICOTTO、TAKKYU ISHINO、KEN ISHII......。参加DJをざっと挙げてみても、タフで信頼出来るひとたちばかりです。

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「RÉMY:ÜSIC」では、ドリンカーに対して現代風に翻訳したアプローチになっています。ひと昔だったら、ブランデーをカクテルにしてクラブで飲む、ということに対してフランス側から理解が得られなかったかもしれません。なぜ、BARでストレートで飲まないんだ?という風に。ただ、時代、そして飲酒環境は刻一刻と変わっていきます。「レミーマルタン」には一口飲めば、その味わいを納得していただける品質があります。ボディがすごくしっかりしているので、ジュースで割るなどどのようにアレンジしても、味がブレないんです。そのあたりも「RÉMY:ÜSIC」の活動にも影響を与えていますね。多少幅を持った見せ方をしても、軸があるので問題ないという。

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-ちなみにクラブでは「レミーマルタン」をどんな風にして、提供することが多いのですか?

フルーツを使ったり、季節感を表現したりと色々試行錯誤を繰り返した結果、今は主に2種類での提供を行っています。ジンジャーエールで割って、ライムを絞った「レミーマルタン クーラー」。そして、クランベリージュースで割った「レミーマルタン クランベリー」前者は男性、後者は女性に受けがいいですね。

-「RÉMY:ÜSIC」での今後の展望はありますか?

例えばですが、「RÉMY:ÜSIC」内で、各界のインフルエンサーに情報発信してもらうということは考えています。音楽だけではなく、アートだったり、ファッションだったりと、色々なカルチャーと絡んでいきたいなと思っていますので、特にクラブでの活動だけに限定しているわけではありません。

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日本の中でも、「東京」という他に類をみないほどの文化拠点で我々のブレないスタイルを発信していこう、と思っています。

そして、遂に今週末に迫った、代官山AIRとPRIMITIVE INC.が新たにスタートさせるパーティー「ROUNDHOUSE」をRÉMY:ÜSICがサポートします。こちらのパーティーではフイナムがプロデュースするフロアもあり、ミッドナイト・フリーマーケットを開催します。是非ご来場下さい。

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RÉMY:ÜSIC
www.facebook.com/Remyusic

BACK NUMBER
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続・今月の顔。 Vol.10 女優・松浦雅

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今年、21週連続で週間平均視聴率21%を記録し話題となったNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』。中でも、ヒロイン・め以子(杏)の娘役・ふ久として大きな注目を浴びたのが新鋭女優、松浦雅。これからの飛躍に一層期待の掛かる彼女の意外な一面はグルメ家? ロック好き? 撮影後の彼女に聞いた、これからの展望。

Photo_Takeshi Abe
Styling_2-tacs
Hair&Make-up_Chika Kimura
Edit_Yohei Kawada

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WHAT'S UP, LARRY? TSUYOSHI NOGUCHI × SHINGO WAKAGI

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ラリー・クラーク。知っておかなければいけない写真家だ。1971年に刊行された『TULSA』は、今でもフォトグラファーだけでなく、多くのアーティストやファッションデザイナーのバイブルとして語り継がれている。そんな伝説の写真家が、今回〈ワコマリア(WACKOMARIA)〉のビジュアルブックを撮影した。これは極めて貴重なことと言える。この写真集のスタイリングを手掛け、本企画の仕掛け人でもある野口強と、自身もまた写真を撮り、映像を制作する若木信吾との語らいから浮き彫りになる、ラリー・クラークという写真家とは?

Photo_Nahoko Morimoto
Edit_Takuhito Kawashima

野口強
のぐち・つよし/スタイリスト。国内外のファッション誌や広告を中心に活動する。

若木信吾
わかぎ・しんご/写真家。1971年静岡県生まれ。2012年には地元の浜松市に書店「ブックス アンド プリンツ(BOOKS AND PRINTS)」を設立。浜松のクリエイティブスポットとして話題となる。

たっぷり時間をかけて写真に収める。

野口強(以下野口): いや、大変だった(笑)。本当に大変だった...。

若木信吾(以下若木): お察しします(笑)。ラリー・クラークには、ずっとオファーしてたって聞きました。

野口: そう。だいぶ前に『HUgE』(※注釈1:講談社刊のメンズファション誌。100号記念にラリー・クラーク特集を組んだ)で、やろうって話になってね。でも、『HUgE』だけじゃなく、なんかほかでもやりたいなって思っていて。「もしやってもらえるんだったら、今回のビジュアルブックもやってください!」って頼んでみたら「いいよ!」って返事をいただきました。

若木: 写真集の序文に書いてありましたね。

野口: それで、『HUgE』のときはマーファ(※注釈2:アメリカ・テキサス州西武の都市)で撮影したんだけど、マーファもマーファで大変だったね。

若木: そうだったんですね。

野口: 基本的には作家だからね。ファッションは、またちょっと違うところがあるでしょ? だからとりあえず、洋服は着替えずにずっと着たままでもいいからって話をしてたんだけど、ラリーも真面目っていうか、こっちの話を聞いてくれるから、「次は何の服でやるんだ?」みたいな。

若木: それは何か意外ですね。結構正直にやってくれるんですね(笑)

野口: そうそう! でも自分が納得いくまで、絶対にシャッターを押さないの。

若木: どんな撮り方をするんですか?

野口: まず被写体とコミュニケ―ションをとる。ずっと話をして、とにかくモデルが心を開くまでシャッターを切らない。それからようやく撮り始めるんだけど、でも基本的にあんまり押さないよね。

若木: 一度押し始めたら、結構押すんですか?

野口: いや、じっくり派だったね。それに、ポートレイト撮るときは「お前ら部屋から出て行け!」みたいな...。

若木: 1カットどれくらい時間をかけるんですか?

野口: 『HUgE』のときは、早くても1カット10分~15分ぐらい。でも、ずっと撮ってるわけじゃないからさ。

若木: 元々知っているからとか関係なく、モデルとのやりとりにすごく時間をかける理由って何なんですかね?

野口: 何なんだろうね。結局モデルになるような子たちって、ラリーからしたら子供みたいなものじゃん。だから、もっと引き出したいってなるんだと思うよ。

若木: なるほど。今回撮ったのは、メキシコ人ですか?

野口: そう。『ワサップ・ロッカーズ』(※注釈4:ラリー・クラークが手掛けた4作目の長編映画作品)に出ていたメンバーで撮影がしたいっていう、ラリーからのリクエストで。でも、みんなあんまり身長が大きくなくて、サンプルが着れないんだよね。だからある程度身長があって、服が着れるような子たちも入れたいってことで、『ワサップ・ロッカーズ』のメンバーに加えて新たにキャスティングしたの。でも、ラリーはメンバーの方にどうしても思い入れがあるからさ...。

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若木: なるほど。

野口: そう。だから着替えさせても、やっぱり撮らないし...。撮らないんだったら、帰らそうよ!みたいな。ラリーはファッションの人じゃないから、そういうことがあるっていうのも、もちろん分かっていたんだけど、なかなか難しいものがあったね。

若木: 野口さんって、よく外国のファッションカメラマンと仕事されてますけど、例えば、テリー(※注釈5:テリー・リチャードソン。世界的に活躍するフォトグラファー)とは、やっぱり違いますか?

野口: 全然タイプが違うね。

若木: どっちも破天荒だけど、方向性が全然違う...(笑)。

野口: でも、あのあきらめない、意地みたいなのはやっぱりすごいよね。あの歳なのに、ものすごいエネルギーあるし。

若木: 僕がラリー・クラークに会ったのって、もう20年ぐらい前。ちょうど『KIDS』(※注釈6:ラリー・クラークが初めて指揮した長編映像作品)が出たころで、すごくオドオドしていたんですよね。取材されることにあまり慣れていなかったんだと思うんですけど。そのときに自分の写真を持ってきて、自分がいかにドラッグを断ち切ってここまで来たかとか、体を鍛えていて人間としてどれだけちゃんとしているのかっていう写真を見せてくるんですよ。

野口: (笑)。でも、なんでみんなそうなるんだろうね?

若木: あとはシャロン・ストーン(※注釈7:米女優。『氷の微笑』などでヒロインを務めた)と肩を組んでる写真を見せてきて、「これを見れば分かるだろ!」みたいな。でも、そのときもちゃんとしたこだわりがあったのを覚えています。

野口: 『HUgE』の撮影のときも、酒も飲まないし、肉も食べないベジタリアンな生活していたしね。

若木: 本当ですか?

野口: それで、この間ユナイテッドアローズ(※注釈8:昨年の9月から約1カ月間開催されたエキシビション『Larry Clark stuff in Tokyo』 のオープニングの際に本人が来日)で日本に来たときは、もう酒は飲んでるし、タバコは吸ってるし...。本人に聞いてみたら「もう痩せすぎてダメだ!」って言ってた。

若木: そうなんですね。

野口: そういえば、今回の写真集はフィルムとデジタルの両方で撮ってもらったんだよね。

若木: ミックスなんですね。あんまり分かんないです。

野口: 前半のカラー写真はデジタルかな。

若木: でも、そういったところを気にさせない、何かはありますよね。デジタルとかフィルムとか、そういうのを越えているのがかっこいいというか。

野口: うん。しかも、自分で全部写真の並びとかページの構成もやってて、ここでずっと作業してたよ。徹夜する日もあったし。でも、それをやる体力があるっていうのはすごいよね。それに、やりたくないものは絶対にやらない、っていう精神だからさ。で、こんなことになってるの。

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事務所の床に写真を並べ、ページ構成を考える。こうして全184ページの写真集が生まれた。

若木: へぇー、すごいかっこいいですね。

野口: そう、超アナログ。

若木: これって出力ですか? それともプリントですか?

野口: コピーと写真原稿をミックスして。テーブルを組んでさ、コンピューターとかも使ってるんだよ。自分の事務所じゃないんだから!って(笑)。それに、朝事務所に入ってきたら、まず冷蔵庫からビール取り出して飲み始めて、夜はシャンパンある?みたいな感じで。

若木: 表紙の絵はいつ描いたんですか?

野口: 前に自分でもペインティングをやるって言ってて、この表紙の絵は今回の写真集用に描いてくれたみたい。セルフポートレイト。

若木: キリストのような自画像ですよね。

野口: そう。最近だと思うんだよね、ペインティングを始めたのって。そんなに前からやってたんじゃないと思う。

若木: どれぐらいのサイズなんですか?

野口: そんな大作じゃないはず。その作品をラリーが複写したデータが送られてきたから、はっきり分からないんだけど。でも長辺が40~50cmぐらいじゃないかな?

若木: 自分の複写で送ってくるんですね。それもまたかっこいい。

野口: でも、これやりながら次の映画(※注釈10:今年発表予定のパリを舞台にした最新作『SMELL OF US』)の編集も、音楽の編集も自分でやってるからさ。パリのアパートにほとんどいたし。

若木: あ、今パリにいるんですね?

野口: 映画の舞台がパリだから、パリで作業してたみたいよ。

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自分が納得できるまで頑固にやり続ける。

若木: ラリー・クラークって今いくつでしたっけ?

野口: 1月で71歳になったみたい。

若木: すごいですね。

野口: でも、荒木さん(※注釈11:荒木経惟。1940年生まれの日本を代表する写真家)とかも、すごく元気じゃない? 何なんだろうね、あのエネルギーは。

若木: 本当ですよね。

野口: でも、信吾もそうなるんでしょ?

若木: そうなるのかなぁ?

野口: なんかさ、やっぱり写真家の人だけだよね。

若木: あぁ、そうかもしれないですね。歳をとってもやってる人たちって。でも、アートディレクターも多いですよね。

野口: あぁ、そうだね。現役バリバリだよね、写真家とアートディレクターのセットは。

若木: スタイリングをやっている人たちは、どういう感じになるんですか?

野口: でも、続けている人たちが多いのかな。みんな元気ですよ!

若木: 野口さんもバリバリやってそうですけどね。

野口: でも、ラリーの歳になるまで、あと20年ぐらいあるよ!(笑)

若木: それにしてもこうやって色々な一流のカメラマンの人たちと連絡とって、一緒にファションやろうって言えるのって、なかなか野口さんぐらいしかいないと思うんですよね。それは本当にすごいと思います。

野口: いやぁ、なんか断られて当然みたいなところはあるからね。それに言うのはタダだから、それでOKって言ってくれれば、ラッキー。そこからの積み重ねのような気がするんだよね。だから、お願いしてみるのも無駄じゃないかなって。

若木: じゃぁ断られても、あんまりがっかりはしないですか...?

野口: 断られても、また今度頼んでみようかなって思うぐらい。ちょっと間をあけてダメ元でね。一回でも一緒に撮影できれば、予算がなくても話は聞いてくれるし。例えばテリーに「20ページなんだけど、本当に全部でバジェットがこれぐらいしかなくて」って言っても、撮ってくれたりするし。ラリーもそんな感じ。いわゆるファッションしかやってない人たちは、やっぱりお金にもうるさいんだけど、でも作家の人とかだと動きやすいのかな。ただ、作家の人にファッションを撮ってもらうのは難しいなとも思うけど。

若木: それはどうしてですか?

野口: いや、いい具合にいけばいいんだけど、うまくいかないとどっちつかずの写真になっちゃうこともあるからさ。

若木: 撮影しているときに、服を直しに入れたりするんですか?

野口: 入れる人と、入れない人がいる。荒木さんは絶対に入れないし、「直さなくていい!」って言われる。でも基本みんな直さなくていいって言うかな? でも、ラリーの場合は「ちょっとここ直して!」とかもあったり。こっちに気を使っているんだろうなってのもあるけどね。やっぱり作家の人だと、一回洋服着せて、あまり服のことは気にしなくていいから、自然に撮ってくださいっていうスタンスの方がいいと思うんだよね。しかも、それを何日間もかけてやるほうがいい。やっぱり3日やそこらでやるっていうのが無理があるんだよ。まぁでも、こちらもお金がないから3日間で撮影してっていう話になっちゃうんだけど。

若木: 実際に野口さんは、『TULSA』(※注釈12:ラリー・クラーク初の写真集。オクラホマ州に住む若者たちの日常をドキュメントした)のプリントを持っていますが、その時のテンションとは違うと思いますか?

野口: いや、全然違うでしょ。『TULSA』撮ってるときと、ベジタリアンで酒もやめているときの写真は。本人のテンションは一緒だけど、やっぱりどこか違う部分もあるんじゃない。毒っぽさとかそういう感じではなくて、ちょっと角がとれたのかなって気はするよね

若木: いわゆるこういう"作家"の写真家と仕事で関わっていきたいっていう思いって何なんですかね? プリント買うだけじゃ、もの足りないって感じてきちゃうんですかね?

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コラージュを制作中。プリントをハサミで切りテープで貼る作業は3時間以上かかることも。

野口: やっぱりこう、一緒に味わってみたいっていうことかな。どういう風に撮るんだろうとか、本当に好奇心だよね。

若木: その好奇心の強さは、見習いたいですね。

野口: いやいや。もう、それだけでやってるようなもんだからね...(笑)。自腹でチケット代出して、ラリーとやれるんだったら、別にそれでもいいと思うし、ギャラもいらないし。まぁどうにかなるって気持ち。本当にその好奇心だけだね。

若木: 今回、このためにリアルプリントを作ったりもしているんですか?

野口: うん、100枚近くプリントしてるかな。

若木: 時間が経ってくるとやっぱりすごく良くなってきたりするじゃないですか。それは仕事であろうが、プライベートワークだろうが。例えばマン・レイなんかもそうじゃないですか。仕事で撮ってたファッション写真もめちゃめちゃいいですからね。ヘルムート・ニュートンも然り。そういうタイミングが絶対来ますよね。

野口: その頃は、死んでるんだろうな、自分(笑)。

若木: (笑)

たっぷりの好奇心と抜群の感性。

野口: いやぁ、でも勉強になりましたよ。あきらめない精神というか、自分のやることに妥協しないというかね。

若木: こうしていくつになっても人生の先輩がいるっていうのはすごくいいですよね。意外とそういう人たちって少ないですから。

野口: でも今回は、本当にすごいなって思ったね。

若木: 俺も40歳を越えちゃって、だんだん一緒に仕事するスタッフも若くなっていくわけじゃないですか? 何か持ち上げられたり、扱いづらいって言われてるって聞いたりして、やっぱりダメだなって思うんですよね...。まだまだ上の人もバリバリでやっているから、若い人たちばかりとやるだけでなく、そんな人たちとも仕事しなきゃいけないとか。だからこういう写真集を見ていたりすると、頑張らなきゃなって思うんですよね。

野口: こういう人たちと仕事していると、アシスタントになった気分になるもんね。イーブンでやっているつもりなんだけど、結局「何? それも自分?」みたいこともやってるし。スタイリングしなきゃいけないわ、カメラ持たなくちゃいけないわ、着替えもさせなきゃいけないわ、みたいな。それにラリー、ひとりで来るしね。

若木: え、ラリー・クラークってアシスタントいないんですか?

野口: うん、連れてこない。すごいでしょ。

若木: フィルムチェンジとかも自分でやるんですか?

野口: うん、自分で。でも、〈ヤシカ(YASHICA)〉の自動巻きは、「お前やっておいて!」みたいな感じ。

若木: まじっすか(笑)。

野口: こっちも忙しいんだからさ(笑)。でも、「ライカは触らなくていい」って(笑)。はい、こちらもそれは分かってます!ってね。

若木: ちょっと難しいですからね。でも、野口さんがフィルムチェンジできるところもなんかすごいんですけど。

野口: 自動巻きぐらいはできるでしょ! いや、面白かったよ。信吾がラリーのポートレイト撮ったのは、20年前だっけ?

若木: そうですね。ニューヨークのソーホー近くのぼろいカフェに呼ばれて、その時は後藤さん(※訳注13:後藤繁雄氏。編集者兼、クリエイティブディレクター)がインタビューして、横でその話を聞いていたんですよね。

野口: 今はトライベッカにあるオシャレなイタリアンのレストランに呼びだされるよ(笑)。

若木: それは面白いですね。そんなちょっとオシャレになったラリー・クラークって、どこのグループにも属さない人じゃないですか。インディペンデントでやっているっていうか。ファッションをやっていても、ファッションの人でもないし、かといって写真の先生として教壇に立って、若い子に教えてるわけでもないじゃないですか。何か孤立しているのに、でも何かオシャレにニューヨークに住んでいるっていうか(笑)。あのバランスっていうか、立ち位置って何なんですかね?

野口: 何なんだろうね、あの歳になってもやっぱりストリート感があるっていうか。かといってラルフ・ギブソン(※米写真家。ニューヨーク在住)とも仲がいいとか。

若木: この最後のクレジット、すごいかっこいいですよね!スペシャルサンクスにラルフ・ギブソンがいるっていうのが。「ラルフ・ギブソンが入ってる!」ってなりますよね(笑)。実際、本人が着ている服とかってどうなんですか? だんだん歳をとっていくと分からなくなっていくじゃないですか。自分の子供のファッションが一番かっこいいみたいなことと勘違いして、突然ビジュアルバンドみたいな格好してくる大人もいますよね。

野口: あの人はスタイルがあるからね。基本ブラックデニムで、Tシャツは〈シュプリーム (SUPREME)〉とか、自分で作ったTシャツ。それに黒のレーヨンのシャツを羽織っていたりとか。で、レザージャケットに〈ボルサリーノ(Borsalino)〉、あとベースボールキャップとか。ブルース・リーのキャップはよくかぶってたね(笑)。基本はスタイルがあって、そこにトレンドじゃないけど、〈シュプリ―ム〉とか〈ステューシー(Stussy)〉を取り入れたりって感じ。

若木: ある意味、バランスがとれているわけですね。

野口: そうそう。でも、移動するときとかのキャリーは、〈ベルルッティ(Berluti)〉のレザーのバッグを2つ持っていたりして。「これって、ベルルッティ?」って言ったら、「いいバックだろ!」って(笑)。そういういいものも好きなんだよね。この間、日本に来たときも、アンティークのステッキを結構買って帰ったしね。

若木: へぇー。なんか荒木さんも独特のスタイルがあるじゃないですか、ロングコートに自分のTシャツに、サスペンダーっていう。

野口: そうだね、森山さんもスタイルあるよね。トレンチコート着てたり。テリーも赤のネルシャツに、〈リーバイス〉の501に〈バンズ〉とかでしょ。面白いよね。

若木: なんか歳だからって、そういう部分を放棄するっていうのがないんでしょうね。ラリー・クラークも、ずっとそのスタイルを続けているっていうか。ある時期がくると、やっぱり辞めちゃったりすることも多いと思うんですよ。もういいかな!?みたいなところだったり。

野口: でも、ちゃんと自分のスタイルを守りつつ、色んなトレンドを入れてる感じだから、いつも見ている人は、あんまり変わらないと思う。

若木: お金があるからって、突然高い物買うと着せられた感は出ますからね、どうしても(笑)。

野口: 今回撮影したサウスセントラル(※ロサンゼルスの西に位置する、低所得階層の街)とかに行くとやっぱり落ち着くというか、やりやすいみたいだよ。

若木: 実際に、今回被写体となってるモデルの子達と仲いいんですか? サウスセントラルでも色々なグループがあると思うんですけど。

野口: 映画のキャストたちとは仲いいみたいよ。

若木: とはいえ、監督と撮られる側、ですよね。どうしてもギブ&テイクの立場っていうか...。撮っている側からするとちょっとやっぱり搾取してるっていうか、結局は自分の作品で出すわけで。彼らはそれに付随して有名になるかもしれないけど、そこまでお金が入るわけでないし、その後の保証はないし...。でもそこって本人たちが頑張れば、上にいけるかもしれない。俺たちはそこの準備はするけど、そこから先はお前らの努力でしょ?みたいな感じじゃないですか。そのピリピリ感っていうか。

野口: なんかね、すごく同等な感じがするんだよね。わざわざラリーの誕生日にニューヨークまで来ていたりとか、常に連絡をとりあっているみたい。何人かはバンドをやっていたり、1人はバーテンやりながら役者をやっていて、今度ガス・ヴァン・サント(※アメリカの映画監督)の映画に出演するとか。みんなまだそこまで有名にはなってないけど、いい感じにやってるみたいよ。あと、たまにラリーのアシスタントやってるやつもいたりだとか。

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同じ写真を何度も見ては、構成を頭のなかで練り、入れては外しを繰り返す。

若木: すごく良い関係ですね。彼らにとっては、お父さん以上に年が離れていますもんね。

野口: そうだね。でも仲いいよ、本当に。

若木: そういう関係性を築けるのは、理想ですよね。だからこうした写真も撮れるわけですね。

野口: 勉強になります!って感じだね。責任感っていうかね。今回の写真集も自分の本にしたいから、それなりに自分の名前を使うからって、最後まで責任持ってやるわけじゃない。あの歳で何日も寝ないで、ここでずっとパソコンから昔の写真を引っ張りだして、それをミックスしたり、コラージュしたり...。で、最終的には、ここまでまとめあげてきたからね。やっぱり本当にすごいなって。ここで一緒に作業しているときは、どうなるかと思ってたけど...(笑)。

WACKO MARIA/LARRY CLARK

今年71歳になった、ラリー・クラークの集大成ともいえるビジュアルブック。〈ワコマリア〉の服を着た『ワサップ・ロッカーズ』に出演したキャストたちの撮りおろしや、コラージュ、さらにペインティングに加え、アーカイブの作品もミックス。ラリー・クラークの魅力を余すところなく体感できる一冊となっている。¥5,000+税(WACKO MARIA 03-5708-5278)

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Think About Line Drawing 加賀美健×平山昌尚×中村穣二 「線画」について語り尽くす。

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加賀美健と平山昌尚と中村穣二。フイナムのブログにも参加していただいている3人のアーティスト。彼らが今、最も気にしている「線画」とは、一体何なのか。いわゆる線のどこに「美」は存在するのか。40歳を迎え、まさかのブロンズ作品を披露したばかりの加賀美健がホストを務め、線というシンプルな方法論に秘められた謎に迫ります。

Photo_Motoyuki Daifu
Edit_Hiroshi Yamamoto
Support_Sayaka Yamada

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ドラマのものさし・特別編 Special Interview 川のほとりに、転がる人生。 ドラマ24『リバースエッジ 大川端探偵社』 脚本・演出 大根仁 

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浅草、隅田川沿いに事務所を構える探偵社にやってくる奇妙な依頼者たち。不可解な調査から、失われた時間を埋めようとする者たちのいびつな欲望や性癖、そして愛が起ち上がる...。下町を舞台に異色の人間模様を描いたマンガ『リバースエッジ 大川端探偵社』を「深夜ドラマの巨匠」大根仁が完全映像化。「ドラマのものさし」特別編として大根監督のスペシャルインタビューをここにお届けする。ひと足早く全12話を拝見した筆者は断言するが、これは大人の男が見るべき傑作である。金曜深夜、いつもの発泡酒よりもちょっとだけいい酒を飲みながら、人間のおかしみと哀しみのドラマに、酔うべし。

取材・文:さくらい 伸
写真:佐藤博信
編集:小牟田亮

「主人公が寡黙だと、周りの人たちにしゃべらせないといけない」

-『リバースエッジ 大川端探偵社』は、大根さんが2009年にドラマ化した『湯けむりスナイパー』(作・ひじかた憂峰、画・松森正)のひじかたさん、というかマンガ好きの間では狩撫麻礼(かりぶまれい)という別名義の方が通りがいいと思いますが、その狩撫さん原作ということで雑誌連載時から目をつけていたんですか?

大根仁(以下、大根): もともと『湯けむり』の登場人物を使って、狩撫さんの作、松森さんの画で『リバースエッジ』の前身のような話を『漫画ゴラク』で描いてるんですよね。手塚治虫的なスターシステムというか、『湯けむり』の源さんが村木で、番頭さんが所長、君枝がメグミ、という感じで。でも、狩撫さんもこれはちょっと違うなと思われたのか、すぐに撤収して、同じ探偵ものという設定で、たなか亜希夫さんの画で描き始めたので、「ああ、こっちのほうがしっくりくるなあ」と。だから、連載の初回から読んでましたね。

-で、これは映像化できるんじゃないか、と。

大根: ですね。それですぐに『漫画ゴラク』の編集者と連絡を取って会いに行って、エピソードが貯まってきたり、役者がハマッたりとか、タイミングが合えばお願いしますという話はしていました。そのあと、忘れていたわけではないんですけど、『湯けむり』を一緒にやったテレ東の五箇公貴プロデューサーから、去年(2013年)の頭くらいに「前に言ってた『リバースエッジ』、オダギリジョーさんでどうですか」と言われたんです。五箇さんは映画『舟を編む』にも関わっていたんですけど、あの映画のオダギリさんはぼくもすごくいいなと思っていたので、それで話が進んでいったという感じです。

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(c)「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会

-原作は、いま単行本化されているだけでも37話分あって、この中からどのエピソードをチョイスして12話にするのか、結構悩まれたんじゃないかと思うんですが。

大根: そもそもテレ東深夜枠なので、それほど潤沢に予算があるわけではないから、まず大がかりな設定のものは外して、と。あとは、12話全体のバランスを取りつつ選んでいった感じですかね。

-各話の順番も原作通りではなく、変えてますよね。12曲入りのアルバムをつくるみたいに、「曲順」も試行錯誤されたんじゃないですか?

大根: 1話と最終話は最初に決めた通りなんですけど、残りの10話に関しては撮影をしながら順番は変えてますね。この話の次はこっちのほうがいいなという感じでシャッフルしてます。

-原作は1話が20ページで、話の骨格はしっかりしてるんですけど、ディティールは結構省かれていて、物語に余白がある。普通に映像化すると15分くらいの尺にしかならないと思うんですが。

大根: 調査の依頼があって話が進んでいって、調査の結果が出て終わるという、起承転結でいうと起と結が明確で承と転の部分が薄いんですけど、そこがむしろ面白いなと思ったんです。本来は『湯けむり』みたいに2話で1回分とかにしたほうがテンポ的にはいいんでしょうけど、今回は割合ゆるいテンポでやりたかったということもあって、こういう形にしました。

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-どうしても設定的には、同じテレ東深夜枠で手掛けられた『まほろ駅前番外地』(2013年)と比較される面もあると思うんですが、『まほろ』との差別化のような部分は意識されたんでしょうか。あちらは便利屋で今回は探偵なので、職業としては違うんですが。

大根: 確かに「依頼もの」という意味では似てるんですけど、『まほろ』はバディものという側面があるので、ある依頼ごとに対して多田と行天という2人の若者がどう動いて、何を感じ取るのかというスタイルだったんですけど、今回はどちらかというと探偵社は受け身で、主役はむしろ依頼する側なんですね。 オダギリさんもその辺りのことは共有してくれていたんですけど、オダギリさん演じる村木は立ち位置としては主役でも、基本的にはつねに受け身で、主役として芝居的に主張するようなこともない。まず主役っぽいセリフは外して、というところから作っていったので、自分の中で両者はそれほど似通ったものではないんですけどね。

-なるほど。

大根: まあ、『まほろ』は原作(三浦しをん)があったものの、ぼくがつくったオリジナルエピソードも多くて、そこにぼくが好きな「狩撫テイスト」を入れてしまった部分もあったので、その辺が似てるんですかね、考えてみれば。

-『まほろ』第2話のカラオケビデオの回(『麗しのカラオケモデル、探します』)がすごく好きだったんですけど、今回はあの回で描かれていたような「過去の時間を埋めていく」話も多いですよね。

大根: そうですね。『まほろ』のカラオケビデオの回とか蝋人形の回(第4話『秘密の蝋人形、引き取ります』)とかが近いのかもしれないです。

-ということは、あの辺のトーンをベースにしつつ、今回はさらに依頼者の人生に焦点を当てている、と。

大根: そう取ってもらっても全然間違いじゃないと思います。

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-探偵社の調査員・村木役のオダギリさん、所長役の石橋蓮司さん、美人秘書・メグミ役の小泉麻耶さんが主要キャストですが、とりわけ石橋蓮司さんの「酸いも甘いも噛み分けた大人の男のもつ説得力」のようなものに対して、大根さんがシンパシーをもって描いているような気もしました。

大根: まず、主人公が寡黙だと、周りの人たちにしゃべらせないといけないという問題があるんですよ。『湯けむり』であれば、でんでんさん演じる番頭さんとか、伊藤裕子さん演じる女将さんにしゃべらせることになるわけですが、今回も村木が語らない分、必然的に所長が状況や心情を説明するシーンが多くなる。原作通りのセリフもあるし、ドラマで新たに書き加えたセリフもありますけど、所長役に石橋蓮司さんが決まって、蓮司さんに合うようなセリフを考えていく中で、ぼくが普段から思っているようなことを預けたフシは確かにあるかもしれないですね。

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(c)「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会
「下町の人間がみんな人情があっていい人、なわけはない」

-原作との違いという点では、村木が毎回、依頼者の予知夢を見るという設定がありますね。たとえば塚本晋也監督の『悪夢探偵』とか、夢探偵を描いた筒井康隆の『パプリカ』など、「夢と探偵」はどこか親和性が高いような気もします。あと、ご覧になっていたかどうか分かりませんが、北川景子が主演した『悪夢ちゃん』というドラマでは、必ずその回のエピソードを予見するような夢を見るシーンから始まります。あの予知夢の設定はどこから来たのでしょうか。

大根: あれは、1話を書き始めた時点で、原作に沿っていくと村木の主役感がまったくないことに気づいて、これはちょっとマズいなと思って付け加えたんですよね。で、書きながら、最終話で「なぜ村木が予知夢を見るのか」を回収しようかとも思ったんですが、それもなんかありがちだなと思って、特に回収しないまま終わったっていう(笑)。

-そ、そうだったんですか。なんというか、デヴィッド・リンチ的といいますか、とても幻惑的で印象に残る設定なんですけどね。

大根: うん。村木は、放っておくと無味乾燥なキャラクターになってしまう恐れがあったので、ああいうものをひとつ背負わせておいてもいいかな、と。まあ、予知夢という設定を付け加えたことで、なんとなくの背景はできているんですけどね。たとえば、小さい頃からああいう夢をよく見る子どもで、それによって人とはどこか違うと感じながら生きてきて、だから自分には収まるべき場所がどこにもないんだと思っている男、というような。

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-ああ、なるほど。オダギリさんの佇まいもありますが、ストレンジャーというか、どこか達観した観察者のまなざしのようなものが見え隠れするのはそのせいなんですね。メグミ役の小泉麻耶さんは、障害者向けのデリヘル嬢を演じた映画『暗闇から手をのばせ』もすばらしかったんですが、このドラマでは毎回、抜群のプロポーションを活かした衣装も見ものです。あの衣装のセレクトは大根さんが?

大根: やっぱり深夜なので、お色気要素は必要だなと思っていて。村木は衣装を変えられないし、所長の衣装で引っ張るわけにもいかないし(笑)。原作を読んで、いちばん遊び甲斐のあるキャラクターはメグミだなと思っていたので、原作にはない「夜は風俗嬢」という設定を付け加えました。

-倖田來未とは違う、本来の意味でのエロかっこいいキャラクターですよね。

大根: そう。小泉さんが決まってから、あのコに合わせて作っていったキャラクターですかね。

-メグミがいることで事務所の空間に動きと広がりが生まれるんですよね。所長も村木も事務所ではそれほど動かないんですけど、メグミは結構いろんな動きをするので。もし、あそこにメグミがいなかったらと考えると...。

大根: 地味過ぎますよね(笑)。

-毎回、一癖も二癖もある個性的な人物が依頼者として登場しますが、これまたキャスティングが絶妙ですね。

大根: 脚本を書きながら頭に浮かんだキャストはプロデューサーにお願いして打診してもらいました。アイドルの回(第4話『アイドル・桃ノ木マリン』)だったらマキタスポーツがちょうどいいなとか。

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-原作のイメージに寄せている登場人物もいれば、そこからさらに膨らませて立体化している人物もいますね。

大根: そうですね。第3話(『ある結婚』)の岩井秀人君も、原作のイメージとはちょっと違うんだけど、あれは最初から岩井君がいいなと思ってました。

-ああ、あの岩井さんもすばらしかったですね。あと、原作ではほぼ毎回、「Bar KURONEKO」で内海佳子師匠みたいなママさん相手に所長と村木がその回の依頼を反芻しながら飲むことになっていますが、ドラマでは毎回違う店で飲んでますね。

大根: 「Bar KURONEKO」を作っちゃうと、あの婆さんも用意しなきゃならないし、婆さんが話をまとめるのもちょっとどうかな、と。ああいうまとめのセリフは所長に言わせたほうがいいだろうし、あと浅草は面白い飲み屋がたくさんあるので、毎回場所を変えて画面に変化をもたせよう、という狙いもありました。

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-基本的にはすべて浅草周辺でのロケなんですか?

大根: そうです。山谷とか三ノ輪まで入ってますけど、半径2、3キロ以内ですよね。第2話(『セックス・ファンタジー』)のラブホテルの内部だけセットですけど。あんな鏡貼りの部屋はないですからね(笑)。

-確かに、鏡貼りの部屋を俯瞰で撮ってますしね。ロケではあんな風には撮れない、と。もともと大根さんは、浅草界隈、都築響一さん言うところの"東京右半分"のエリアには詳しかったんですか?

大根: ぼくは実家が千葉の船橋なので、中高生の頃に東京に遊びに来ようとすると、まず錦糸町とか浅草辺りになるんですよ。名画座とかに通うようになると、総武線一本で行ける浅草に行くことになる。今は六区辺りも映画館はほとんどなくなっちゃいましたけど。もちろん、その頃は観音裏みたいなディープな場所に足を踏み入れることはなかったものの、街を歩く人たちの雰囲気が、たとえば渋谷や新宿みたいな若者中心の街とは明らかに違うなとは感じてましたね。

-そういえば第1話(『最後の晩餐』)で、村木が「下町に人情なんてないですよ。テーマパークと一緒です。金を払えば、いくらでも下町らしいキャラクターを演じてくれるんです」などとうそぶくシーンがありました。12話を通して、村木が唯一、下町について批評的な言葉を吐くシーンでもあるんですが。

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大根: 原作にはないセリフですけど、いかにも狩撫さんが書きそうかなと思って(笑)。まあ、「下町・人情・ノスタルジー」で撮るのは簡単なんですけど、原作が持つ、下町を俯瞰で捉える乾いた視点みたいなものは割と意識しましたね。そういう意味で言うと、「雷門と仲見世は撮らない」というのはあらかじめ決めていました。いわゆるザッツ浅草のランドマーク的な場所は撮らないでおこう、と。

-確かに観光地としてのオモテの浅草とは違う陰の部分が描かれていますよね。

大根: あと、身近に下町の人間がいるんですけど、まあ性格悪いんですよ(笑)。

-下町の人間がみんな人情があっていい人かっていうと...。

大根: そんなことはない!と。すぐ人の悪口とか言うし(笑)。地方出身者で下町に憧れて住んでいて人情がある人はいっぱいいますけどね。

-その辺は、大根さんの下町観のようなものがドラマにも出ている、と。

大根: そうかもしれないですね。

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「今回、難しかったのは、原作が未完だということですね」

-下町を舞台にした人間ドラマということで言うと、本作は江戸的というか、落語のような味わいもあります。画面の安定感も含めて、名人の落語を聴いているような語り口というか。以前「『モテキ』は監督としての青春期だった」とおっしゃっていたかと思うんですが、それに則れば、本作で演出家として円熟の領域に行きつつあるのかな、などと思ったのですが。

大根: それはないんじゃないですかね?(笑)『恋の渦』みたいな映画も撮ってるし、次の映画も青春ものですから。全然、円熟とは程遠い。

-それを聞いて安心しました(笑)。もうひとつ、江戸的ということで言うと、探偵社の事務所の壁に歌川国芳の浮世絵が飾られていたのが印象的でした。ひとつは巨大な骸骨を描いた『相馬の古内裏』で、ひとつは最近「江戸時代に描かれたスカイツリー」として話題になった『東都三つ又の図』ですね。

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(c)「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会

大根: あの骸骨の絵は、前から何かのセットでハマるところがあれば使いたいな思っていたんですけど、なかなかあんな絵を背負えるセットがなかったんです。原作で描かれている事務所は割合クラシックなタイプのレイアウトで、これをそのまま再現するのは簡単はなんだけど、何かちょっと違うテイストが欲しいなと思っていた時に、「そういえば、あの国芳があったな」と。「人間、ひと皮剥けばみんな骸骨なんだよ」みたいなメタファーとか、最終話に向けて不穏なムードをあらかじめ仕込んでおくとか、そんなことでもないんですけど。

-ないんですか!(笑)。

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大根: 何か意味ありげに見えたらいいな、ぐらいの感じで(笑)。まあ、あの絵が単純に好きだったという話なんですけどね。あと、事務所に関しては、浅草から合羽橋(業務用の調理器具などを扱う問屋街)が近いので、村木が使っている机や棚は厨房用のものを揃えたんです。厨房器具のメタリックな質感とか機能的な感じも前から気になっていて、どこかで使いたいなと思ってました。

-今回、画面のつくり方としては、フィックスが基本で、ゆっくりと横移動したり、割とスタティック(静的)な画が多い印象があったんですが、その辺りは意図があるんでしょうか。大根さんというと、手持ち撮影が多いイメージもありますが。

大根: 確かに『モテキ』なんかは手持ちが多かったんですけど、今回はああいった生々しい話でもないですし。そういえば、映画『恋の渦』も、ほぼ全編手持ちですね。まあ手持ちに飽きてきたというか、疲れてきたというか(笑)。内容的にも今回はきっちりした画で見せていったほうがいいな、と。

-映像的に参照した作品は何かあったんですか?

大根: うーん、何かあったかなあ。

-たとえば、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライヴ』なんかを想起する場面もあったんですが。

大根: ああ、それで言うと、同じ監督の今年公開された『オンリー・ゴッド』かな。バンコクが舞台だったんですけど、夜の雰囲気とか色使いが浅草の猥雑な感じにちょっと近いなと思って。ハイスピード撮影の使い方とか、確かに影響されているかもしれないですね。

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-あと、今回オープニングとエンディング曲をEGO-WRAPPIN'が手掛けていて、ドラマの世界観に最高にハマっているんですが、劇伴もEGO-WRAPPIN'の森雅樹さんが手掛けています。森さんが劇伴を手掛けるのはこれが初めてですよね。

大根: 初めてです。EGOの音楽を聴いていて、ずっと森さんは劇伴ができる人だと思っていたんですよ。こういう仕事をしていると、バンドサウンドを単音で聴く癖がついていて。もちろんバンドサウンドの厚みのある音の良さもあるんですが、劇伴として考えた場合、そのサウンド構造だとちょっとうるさくなる可能性がある。そこで、リズムを抜いたり、ギターを抜いてベースだけ残したり、音数の少ないもので展開させていくのがぼくは好きなんですけど、EGOの曲を聴いていると、「この曲のギターのリフだけ」とか「このベースラインだけ」「このドラムだけ」みたいに単音だけ抜き出しても十分にかっこいい。だから、劇伴ができる人なんじゃないかな、と。このドラマ化の話が決まった時、浅草の空気を知っているミュージシャンがいいなと思って、森さんが浅草に住んでいることも知っていたので、それでお願いしてみようと思ったんです。最初はオープニングと劇伴だけという話だったんですけど、エンディングもやってもらえるという話になって。

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-あのエンディング曲がまたいいですよね。金曜の夜に酒でも飲みながら見て、最後あの余韻に浸りつつ終わる、という。オファーする際に何かイメージは伝えたんでしょうか。

大根: オープニングはツカミという部分もあるので、今まで積み上げてきたEGOのテイストにプラス新しいイメージを入れた、ファンも納得のザッツEGO-WRAPPIN'みたいな曲を、とお願いしました。エンディングに関しては、森さんなりのシティポップというか、アーバンな雰囲気で、と。ああいったループ系の曲はこれまでのEGOにはないタイプなので新鮮ですよね。

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「基本的には、ぼくは今でもテレビの人間だと思っています」

-大根さんの仕事は、『モテキ』以降、ドラマと映画を行き来しつつ、その間に演劇などもあるというスタンスですが、それは今後も変わらずに?

大根: 基本的にぼくは今でもテレビの人間だと思っているんですけど、もちろん映画も好きだし、幸いにもいろんなお話しをいただけたりもするので、どっちもやっていきたいなとは思っています。

-2013年は映画『恋の渦』も評判になりましたよね。ヨーロッパや台湾でも上映されたりして。糸井重里さんやジブリの鈴木敏夫さんら、目上の人たちからも絶賛されていましたが。

大根: そうですねえ。糸井さんには『モテキ』も褒めていただいて。いや、ありがたい話ですよ。『恋の渦』はほんとに全然そんなつもりはなくて、形としては自主映画だし、やり逃げのつもりだったんですけど(笑)。当初は12回くらいの上映といわれていたので、そこでちょっとでも爪痕を残せればいいなぐらいに思っていたのが、まさかこんなにロングランになるとは。ましてや海外の映画祭に呼ばれるなんて考えてもいなかったし。

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-目上のおじさま方から愛されていることについて、ご本人はどう受け止めていらっしゃるんですか?

大根: いやいやいや、別におじさま方を転がしているつもりはないですよ?(笑)。ただ、年配の方にギラギラした欲望がないのかというとそんなこともないでしょうし、恋愛ものとかは、ファッションや言葉づかい、携帯みたいなガジェットの見え方は今どきでも、根底に流れる物語性や感情はどの世代もそんなに変わらないはずなので。

-そういえば、大瀧詠一さんが大根さんの作品を褒めていたという話も。

大根: ナイアガラのスタッフに知り合いがいて、その人から聞いた話では、さっきおっしゃってくれた『まほろ』のカラオケビデオの回が良かった、と。大瀧さんはバラエティもものすごく詳しい方なので、『探偵ナイトスクープ』をあそこまでフィーチャーしたドラマというのもどうかしてるぞ(笑)、というようなことをおっしゃっていただきましたね。

-大根さんは脚本も自分で書かれていて、よくツイッターでも「脚本がなかなか進まない」みたいなことをつぶやかれているんですが、それでもやっぱり自分で書きたいという気持ちが強いんですか?

大根: いやー、ほんとは脚本は書きたくないんです。もともとプロの脚本家ではないので時間もかかるし、効率が悪いなとは思うんですけど。脚本さえ書かなければ、もう少しコンスタントに作品がつくれるんですけどねえ。

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(c)「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会

-でも、そこはやっぱり譲れないものがあるという。

大根: 今回も脚本は黒住光さんに手伝ってもらっていますけど、ベースの部分は自分で書かないとちょっとしっくりこないというか。といっても昔から書いていたわけではなくて、『週刊真木よう子』とか『湯けむり』辺りからなんですけどね。たとえばロケハンをして、いい場所が見つかった時に、「じゃあこのシーン、ここに置き換えて」みたいなことをするとセリフが微妙に変わるので、そういう時、自分で書いていると話が早いじゃないですか。あと、現場でちょっとセリフに違和感があるな、という時にも、もともと自分で書いているから変えやすい。

-人の書いた脚本だと、変えちゃマズいのかな、とか。

大根: うん、やっぱりそこは遠慮が出ると思うんですよ。

-たとえば、の話ですけど、山田太一さんの脚本があって、大根さんに演出の依頼がきたらどうされますか?

大根: いやー、考えたこともないですけど。山田先生がご自分と年齢の近い人物を主人公にされる場合は、やはりこれまで先生の脚本を何本も演出されてきたようなベテランの方のほうがいいとは思うんですけど。

-もちろん年配の人が出てくるにしても、主人公が若者という話も結構ありますよね。

大根: ああ、『ありふれた奇跡』とか。そうですね。先生の脚本は世代間の差異みたいなことがテーマになることも多いので、自分が演出する意味のようなものがもしあるのであれば、という感じですかね。って、畏れ多くて考えたことないですけど(笑)。

-次回作の映画も現在進行中とのことですが。

大根: 脚本の決定稿もできて5月から撮影に入ります。まだ詳しいことは言えないんですけど。

-そちらも楽しみにしつつ、ドラマの方も期待しています。今日は長々とありがとうございました。

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500_18.jpg ドラマ24「リバースエッジ 大川端探偵社」
原作:ひじかた憂峰・たなか亜希夫「リバースエッジ 大川端探偵社」 日本文芸社
演出:大根仁
脚本:大根仁
音楽:EGO-WRAPPIN'
出演:オダギリジョー、石橋蓮司、小泉麻耶ほか
制作著作:「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会
(c)「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会

テレビ東京系 毎週金曜深夜0時12分~放送
(テレビ大阪は翌週月曜夜11時58分)

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RÉMY:ÜSIC×HOUYHNHNM 音楽を軸とした、様々な文化で共鳴する 両者のコラボレーションの形を追う。

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コニャックの名門〈レミーマルタン(RÉMY MARTIN)〉が、ミュージックラバーに向けてスタートさせたプロジェクト「RÉMY:ÜSIC(レミュージック)」。音楽をベースにした様々なカルチャーを有機的に結びつけて、ミュージックシーンを盛り上げていく起爆剤のような存在である同プロジェクトを2014年のフイナムでは、何回かに分けて追いかけていきます。

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3月29日(土)、PRIMITIVE INC.と代官山AIRがスタートさせた「ROUNDHOUSE supported by RÉMY:ÜSIC」が開催されました。コニャックの代名詞であるレミーマルタンが発足した音楽プロジェクト「RÉMY:ÜSIC」に、今年10周年を迎えるフイナムがコラボレーションした本イベント。メインアクトには"魂の解放者"ことマーク・ファリナ(Mark Farina)が登場。また1階のNoMadスペースでは、フイナムプロデュースにより「MIDNIGHT FREE MARKET」をオープン。蓋を開けてみれば今年一の動員を要し、大変な賑わいをみせたイベントになりました。というわけで、興奮冷め止まぬうちに、この記念すべき一夜をフォトレポートで振り返っていきたいと思います。

Photo_Masanori Naruse & HOUYHNHNM
Edit_Jun Nakada

まずはイベントの模様をチェック!
イベントの全貌を駆け足でレポート。
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雨がちらほら降って来た24時、いよいよフリーマーケットがスタート。NoMadスペースに一気に人が押し寄せて来て、シャッターを押せないほど盛り上がってました。一番奥からBEAMSチーム、NEXUSVIIチーム、BAYCREWSチーム、そして我らがフイナムチーム。なかでもNEXUSVIIブースには掘り出し物が多々あったようで、古着好きのメンズがわんさか。その他、意外と女性の方も多く、たくさんアイテムを抱えて、メインフロアへ消えて行った方もちらほら(笑)
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同じ時間、ラウンジフロアではマーク・ファリナが十八番とも言うべき"Mushroom Jazz Set"をプレイ。まだ始まったばかりにも関わらず、あっという間にフロアは満杯。すでに一心不乱に踊っている人多数。マークの人を酔わせるプレイには天性を感じさせます。また、この日の為だけのスペシャルメニューを含む3種類のレミーマルタン・カクテルをサーブがあり、"飲みやすくて美味しい!"、"正直あんまりコニャックのことを知らなかったけど、このカクテルは気軽に飲めるし美味しい"など、来場者からの評判も上々。さらに飲んだ方には「RÉMY:ÜSIC x HOUYHNHNM x ROUNDHOUSE」のトリプルコラボによる、缶バッジ型オーディオプレーヤー"PLAYBUTTON"のプレゼントも。スペシャルドリンクと嬉しいノベルティがパーティのさらなる盛り上がりに華を添えてくれたのでした。
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そしてメインフロアの"House Set"。ラウンジの"Mushroom Jazz Set"で徐々に温められてきたフロアはいよいよ最高潮に。JackinなHouseからClassicsまで、超人的な卓越したスキルとセンスでミックスする彼のスタイルはまさに唯一無二。フロアを完全にロックしてました。さらにVJには日本が誇る奇才芸術家、宇川直宏が参戦。サンフランシスコに住んでいた20年以上前にマーク・ファリナのDJで踊り明かした体験を持つ彼とのコンビネーションは、まさに阿吽の呼吸。五感を刺激する素晴らしいものでした。
あとがき
フロアを湧かせたDJやフリマの出店者のみなさんはもちろん、何より来場者が一番楽しんでいた「ROUNDHOUSE supported by RÉMY:ÜSIC」。かくいう自分もその1人です。とにかく、スタッフのみなさんのご協力があってこそのイベント、本当にありがとうございました! というわけでフイナム読者のみなさん、次回は6月に開催予定です。もっと盛り上げますので、どうぞ楽しみに♡

ROUNDHOUSE supported by RÉMY:ÜSIC
開催日:2014年3月29日(土)
場所:代官山AIR

【MAIN FLOOR】

DJ:Mark Farina -House Set- (Mushroom Jazz / Great Lakes Audio / OM)
、REMI (DAWD / R20)、NEBU SOKU、 STOCK (World Spin / JMC)

 VJ : UKAWA NAOHIRO (DOMMUNE)

【LOUNGE】

DJ:Mark Farina -Mushroom Jazz Set- (Mushroom Jazz / Great Lakes Audio / OM)、JUN KITAMURA (Capricious Records / DAWD)、NEEMURA (The OATH / Reyes Magos)、haraguchic (DAWD / FFF)、JAVA、SINO (DAWD)

【NoMad
 MIDNIGHT FREE MARKET produced by HOUYHNHNM
】
DJ:USkey、OMI (ETHOS & VERVE)、K27T (MAGIC STICK)、Mr.Tikini、HOUYHNHNM
www.air-tokyo.com
www.facebook.com/Remyusic
www.nomad-tokyo.net
www.primitive-inc.com

BACK NUMBER
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「RÉMY:ÜSIC」特集の第一回は、そもそも「RÉMY:ÜSIC」とは何ぞや? そして「レミーマルタン」とは?という根本となる部分に迫ります。過去に開催されてきたイベントの様子を振り返りつつ、「RÉMY:ÜSIC」側へのインタビューを軸に、本プロジェクトの概要を解き明かしていきます。

レミーマルタン×良質な音楽=RÉMY:ÜSIC。

-まず、「RÉMY:ÜSIC」の前に、現在のレミーマルタンの立ち位置について伺えますか?

1980年代バブル期に、優雅にブランデーグラスで飲む高級品というイメージが強かった「レミーマルタン」ですが、現在はお父さん、おじいちゃんが棚に大事にとっておいているお酒というイメージが強いのではないでしょうか。若い世代になると、「レミーマルタン」自体を知らないという状況でもあります。実際、ブランデーの消費というのは、90年、91年をピークにずっと落ちてきているんです。

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-正直、ブランデーとウイスキー、コニャックとスコッチの違いをきちんと説明できる人は少ないと思います。(違いについてはこちらを参照。)なぜそういった状況になっているのでしょうか?

バブル時代などよく飲まれていた時期も、「レミーマルタン」というのは、銀座や六本木などのクラブで飲まれるのがほとんどであり、ある種特殊な環境での需要だったんです。それがバブルがはじけて以降、上司に連れて行ってもらう"接待"という名の勉強の場が、会社の都合によりどうしても減ってきてしまった。そうして若い世代の人たちのブランデーやウイスキーについて学ぶ機会が失われていったのだと思います。

-そこで、なんとか新しいユーザー層に手に取ってもらえるようにしたい。

その通りです。その施策の一つとして、「音楽」を軸とした「RÉMY:ÜSIC」が生まれたんです。

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-具体的にはどんな活動をしてきたんですか?

2012年の6月に「ageHa」で行われたイベントを皮切りに、様々な試みに取り組んできました。「ageHa」ではレギュラーパーティである「COCOON HEROS TOKYO」や「CLASH」などで、レミーマルタンのブースを出してドリンクを紹介しました。また、購入した方を対象に抽選を実施、当選者をイラストレーターが"テクノヒーロー"として描くなど、ライブな仕掛けを打ちました。あとは月間音楽誌『NightOut』や、グローバルフリーマガジン『VICE』、そしてカルチャー誌『EYESCREAM』などなど、多くのメディアとタッグを組んできました。

-テクノを中心とした音楽でスタートしたのはどういった理由からですか?

レミーマルタンは決して安いお酒ではありません。百貨店などでは1本5,000円ぐらいで売っているようなお酒です。そういった中で、「良質な音楽」「良質なミュージックラバー」が集うパーティは何か?と考え、テクノミュージックを中心の活動として構築していきました。

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-確かに日本におけるテクノは、ストイックでピュアなイメージがあります。実際にパーティを行ってみていかがでしたか?

最初の「ageHa」でのイベントでのリアクションは「おっ、なんか新しいタバコのブランドですか?」といようなものでした。若者にとってはそれぐらいの認知なんだなという発見がありましたし、ここからきちんと伝えていかなくてはいけないな、と思いを新たにしました。ただ、その後、月1で同じパーティを開催し、色々な施策を打ち続けることで、リピーターも増えてきました。その後、「ageHa」から活動の場所を広げて、もっと広い人たちに認識してもらえるようにと、色々なイベントや、メディアとタッグを組み、様々なアプローチをしてきました。

-クラブシーンでのお酒といえば、近年はスミノフやレッドブルなどのイメージがありましたが、「RÉMY:ÜSIC」はそれよりも踏み込んだ展開をしているような印象です。

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その通りですね。ただ協賛しているだけではなく、一歩も二歩も踏み込んでの取り組みをしています。単純にお酒を提供するだけではなく、こだわった「音楽」と一緒にやっている、というのが重要なんです。「レミーマルタン」がこうした活動をしているということに対して、色々な方が興味を持ってくれているのを感じます。

-どんなイベント、メディアと組むようにしているのですか?

時代の流れを的確に見極めるというのはもちろん、フランスで作られているというお酒というのを意識して、なるべくヨーロッパのアーティストと絡むようにしています。あとは最先端の存在である、ということでしょうか。また、「レミーマルタン」というブランドを考えた時に、流行っている音楽と安易に組むのではなく、しっかりとした歴史や背景があるものと手を結ぶようにしています。

- RICARDO VILLALOBOS、ZIP、DJ Harvey、MAURO PICOTTO、TAKKYU ISHINO、KEN ISHII......。参加DJをざっと挙げてみても、タフで信頼出来るひとたちばかりです。

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「RÉMY:ÜSIC」では、ドリンカーに対して現代風に翻訳したアプローチになっています。ひと昔だったら、ブランデーをカクテルにしてクラブで飲む、ということに対してフランス側から理解が得られなかったかもしれません。なぜ、BARでストレートで飲まないんだ?という風に。ただ、時代、そして飲酒環境は刻一刻と変わっていきます。「レミーマルタン」には一口飲めば、その味わいを納得していただける品質があります。ボディがすごくしっかりしているので、ジュースで割るなどどのようにアレンジしても、味がブレないんです。そのあたりも「RÉMY:ÜSIC」の活動にも影響を与えていますね。多少幅を持った見せ方をしても、軸があるので問題ないという。

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-ちなみにクラブでは「レミーマルタン」をどんな風にして、提供することが多いのですか?

フルーツを使ったり、季節感を表現したりと色々試行錯誤を繰り返した結果、今は主に2種類での提供を行っています。ジンジャーエールで割って、ライムを絞った「レミーマルタン クーラー」。そして、クランベリージュースで割った「レミーマルタン クランベリー」前者は男性、後者は女性に受けがいいですね。

-「RÉMY:ÜSIC」での今後の展望はありますか?

例えばですが、「RÉMY:ÜSIC」内で、各界のインフルエンサーに情報発信してもらうということは考えています。音楽だけではなく、アートだったり、ファッションだったりと、色々なカルチャーと絡んでいきたいなと思っていますので、特にクラブでの活動だけに限定しているわけではありません。

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日本の中でも、「東京」という他に類をみないほどの文化拠点で我々のブレないスタイルを発信していこう、と思っています。

そして、遂に今週末に迫った、代官山AIRとPRIMITIVE INC.が新たにスタートさせるパーティー「ROUNDHOUSE」をRÉMY:ÜSICがサポートします。こちらのパーティーではフイナムがプロデュースするフロアもあり、ミッドナイト・フリーマーケットを開催します。是非ご来場下さい。

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RÉMY:ÜSIC
www.facebook.com/Remyusic

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