
アーティスト・加賀美健がオーナーを務めるショップ「Strange Store」。その店舗内にある何の変哲もないドアを「ギャラリー ドア」と命名し、ギャラリースペースとして利用し始めて2年弱。決して有名では無いものの作家性に富んだ個性豊かなアーティストをブッキングしてきました。そんな「ギャラリー・ドア」の今を知るべく、加賀美健と彼が気になるアーティストに話を伺ってきました。
Photos_Nahoko Morimoto
Edit_Hiroshi Yamamoto
-以前もストレンジストアの便所のドアこと「ギャラリー ドア」でエキシビションを行ったアーティストにフォーカスした企画を行いましたが、改めて今同様の企画をやりたくなったというのは、加賀美さんのなかで心境の変化があったということですか?
加賀美: 何もないですよ(笑)
-とはいえ、少なくとも「ギャラリー ドア」でエキシビションを続けていることには理由があるんですよね?
加賀美: もちろん、続けることによって、面白い人が集まってくれるというのはあります。ただ、それが当初の目的であった集客や売上に繋がっているかというと、まったくなっていない(笑)。
-ストレンジストアは『GINZA』や『POPEYE』といった超一流のファッション誌に紹介されたりもしていますが。
加賀美: その効果なのか、遠方から足を運んでくれるお客さんもいらっしゃいます。ただ、営業時間が不規則なので、驚くような集客には繋がっていません、悲しいかな。石油王みたいな大金持ちが来てくれたら嬉しいんですけど(笑)。でも、こうやってお店を持っていることで繋がった人脈もありますし、面白い才能に出会うこともあるんです
-ということは、今回は加賀美さんが最近出会った才能をご紹介いただけるということですね。
加賀美: 才能を紹介するというよりも、世の中がお洒落な方向に向かっている気がするので、まったく異なる世界をストレンジストアならではの視点で見せていきたいな、と。そこで山本君(フイナム)に声をかけて、おつゆちゃんとSONY SIMIZU君、mahiSasaMvara君を招集したんです。
mahiSasaMvara
北海道出身。2011年より「Sun Flower Collect」からZINE"ARROWS"、SONY SIMIZUとのZINE"I am..."を発行。
mahisasamvara.tumblr.com
今後の目標
時間に遅れないことですね。まだまだ学生ですし。なるべく深くならないことをやっていきたい。
"EXHIBITION "Sord" (in Aquvii Art THE TERMINAL)
SONY SIMIZU+maiSasaMvara
2013.4.26. fri - 5.5. sun/at THE TERMINAL"
SONY SIMIZU
Born 1993 in Tomakomai,Hokkaido. Lives and works in Tokyo
今後の目標
指名手配犯の作品は極めていきたい。あとは犯罪者をモチーフにしたり。「ギャラリー ドア」の展示で、始めてmahiSasaMvaraと一緒に作品作りをしたので、そういった活動もやっていければ面白いかなと。アイアムとか。
"EXHIBITION "Sord" (in Aquvii Art THE TERMINAL)
SONY SIMIZU+maiSasaMvara
2013.4.26. fri - 5.5. sun/at THE TERMINAL"
-ちなみに今回、この3人を選んだ理由はあるんですか?
加賀美: 最近「ギャラリー ドア」でエキシビションを行った人たちですね。
-「ギャラリー ドア」でエキシビションを行うアーティストの選考基準はあるんですか?
加賀美: 無いですよ。作品を観て、「ヤバイ!」と思うか、思わないか。「ヤバイ!」と思えばすぐにお願いする。一瞬の閃きみたいなものです。僕の場合は日の目を見ない才能をフックアップしようなんて、これっぽっちも思っていないですからね。趣味に近いというか、自分の部屋に飾りたいって思う方にお願いする。実際にお願いしたアーティストの作品は、必ず自分でも購入していますし。
-今回の3人はお店のお客さんとして出会ったのですか?
加賀美: おつゆちゃんは共通の知人を通じて、SONY SIMIZU君とmahiSasaMvara君は僕に会いにお店まで来てくれて、という感じですね。去年の4月に北海道から出てきたばかりで、どちらもまだ美大生なんですよ。で、作品を見せてもらったら、カルト教団の指名手配犯をモチーフにしていて(笑)。その作品をキッカケに展示をお願いしたんです。ちなみにおつゆちゃんは彼らの熱狂的なファンであることを公言しています。
おつゆちゃん: そうなんですよ。加賀美さんに話を伺った段階でヤバイな、と。モチーフのインパクトも強いけど、そのモチーフを活かす構成力も素晴らしい。2人にしか出せない世界観には、嫉妬を憶えるほどです。
-ところで美大生の2人はどういったキッカケでストレンジストアに足を運んだんですか?
mahiSasaMvara: 北海道にいる頃から加賀美さんが気になるアーティストの1人だったので、せっかく上京したので足を運んでみようかなと。それでSONY SIMIZUと一緒に。
加賀美: 来店したときは、危ない2人だなって思っていましたよ(笑)。格好もヘンテコリンだし、かなりキョドっていて。
mahiSasaMvara: まさか加賀美さんが店頭にいるとは思っていなかったので、ビックリしたんですよ(笑)。
-ちなみにSONY SIMIZU君とmahiSasaMvara君はどういった間柄なんですか?
mahiSasaMvara: 高校の同級生ですね。今通っている学校は違うんですけど、お互いに友達が作れなくて。結局、一緒に行動していることが多いんです...。
-そんな2人がアートを志した理由を教えてください。
SONY SIMIZU: 志しというほど、大それた感じは無いんです。ただ、2人とも絵は描いていて。なんとなく、というか。自然に、です。
-指名手配犯をモチーフにした理由はあるんですか?
SONY SIMIZU: 僕らは1993年生まれなんですけど、1995年に宗教がらみの大きな事件が起きて、日本全国にモンタージュ写真がばらまかれましたよね。子供ながらにその写真は、恐怖の対象でした。不気味で。それがずっと脳裏に残っていて、高校の頃に美術の授業で描く題材として突然頭に浮かんできてしまい。それ以来、取り憑かれたように描いています。
おつゆちゃんaka OTUYUCHAN
不幸の科学執行役員。1985年1月生まれのダイナマイトボディ。
www.houyhnhnm.jp/blog/otsuyuchan/
今後の目標
第二子を作るのと、会社で一番の成績を取る、あとはゾンビ映画を作ろうかな。ナヌーク君と。
-ちなみにおつゆちゃんはどういったキッカケで作品作りを始めたんですか?
おつゆちゃん: 失恋ですね。失恋して、自殺未遂を繰り返して、フラれた彼女にストーキングして、ノイズミュージックを好きになって。とにかく精神的に病んでいったんです。それまでは大手広告代理店を目指すような典型的な優等生だったんですけど、180度変わってしまった(笑)。そこから自分と向き合った作品を作るようになっていきました。
-......(ドン引き)。
加賀美: おつゆちゃんの作品も、かなりヤバイ。コラージュや実際に被れるマスクを作ったり、はたまた素顔を出してAKB48の峰岸みなみの謝罪動画を真似してみたり。作品のバランスがハチャメチャ。ジャンルを特定しにくいというか。それでいて毒々しく、なおかつキャッチー。
-こうやって改めて話を伺うと、とんでもないアーティストをピックアップしていますよね。
加賀美: こういった作家を選ぶのも瞬発力なんですよね。「ヤバイ!」と思ったら、すぐにお願いする。もちろん話をして理解が深まることもあるけど、一瞬のインパクトが大事。作品さえ良ければ、説明なんていらないと思っていますからね。
-そういった瞬発力は日常生活にも及んでいますよね。
加賀美: テレビを見ていても、町を歩いていても「ヤバイ!」と思ったモノは僕にとってはすべて同列ですからね。アナウンサーの髪型も、壁の落書きも、それこそ彼らの作品も、すべてがアートとしてヤバイ。ただ、どういうわけか美術界は説明を求めすぎる傾向があるんですよね。
-ちなみに若い作家に展示をお願いする理由はありますか?
加賀美: 僕と同世代となると、商業的にならざるえないじゃないですか、生活もありますから。むしろ僕が求めているのは、純粋に衝動的に作品作りをしている人たち。となると、必然として僕より若い世代になってくる。しかも、世代が異なると文化が違うから、思いもよらない作品を作っているんですよ。でも、正直なところ年齢はそこまで気にしていません。「ヤバイ!」と思ったらすぐ動くので。
-なるほど。それでは最後に今後のエキシビションの予定があれば教えてください。
加賀美: 予定は不定期なので。というよりも、やりたい人は是非お店に来てください。
-お店というよりもクリエイティブスポット的な役割を担うようになってきましたね。かなりカオスではありますが。
加賀美: そもそも僕はアートに限らず意味の無いものに惹かれるので、なるべくしてなった、とも言えます。というわけで、今後も無意味な作家さん、作品を大募集!! 意味なんていらないよー!! 説明なんていらないよー!!
STRANGE STORE
住所:東京都渋谷区鴬谷町12-3-301
電話:03-3496-5611
営業時間:15:00〜20:00 不定休
strangesto.exblog.jp
ストレンジストア通販サイト by strangetakata
strangetak.exblog.jp
